ソラツチコラム

空と土プロジェクト10周年記念

空と土プロジェクトをSDGsの視点で考えてみると

大和田順子 さん

大和田順子

空と土プロジェクトも10年が経ちました。プロジェクト発足当初よりアドバイザーを務めさせていただきました。これまでの10年を振り返り、また、これからの10年を展望するにあたり、「SDGs」(国連・持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals)の視点でこのプロジェクトを考えてみました。

SDGsは、国連が2015年9月に制定した世界共通の目標です。2030年までに世界が直面している様々な課題を解決しようというものです。SDGsには主に開発途上国の貧困に起因する問題解決をめざす目標群と、持続可能な社会づくりをめざす目標群を合わせて17の目標が含まれています。さらにその17の目標は169のターゲットに細分化されており、途上国および先進国、自治体や政府、企業、学校、市民団体など組織から個人まで、すべての人が関わることが可能です。

また、国連が定める持続可能な開発とは、将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する開発であり、「持続可能な開発を達成するためには、経済成長、社会的包摂、環境保護という3つの主要素を調和させることが不可欠」だとも言っています。

国内では、内閣府が今年3月に「SDGs未来都市」を募集し、29の県や自治体が選ばれました。その申請書に経済、社会、環境の三側面から取り組みを考えるフォーマットがありました。そこで、「空と土プロジェクト」をそのフレームに当てはめ考えてみました。それが次の図です。

「空土プロジェクト」都市と農村の交流で互いに元気に!
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そもそも、当初増冨地区が直面していた課題は、過疎・高齢化により耕作放棄地が増大し、限界集落になっていたということでした。当時は「耕作放棄地」や「限界集落」という言葉も耳慣れないものでした。そこで、「空と土プロジェクト」がスタートし、三菱地所やグループ会社社員がボランティアとして耕作放棄地を再生し復田、酒米を植え、日本酒や焼酎を造るようになりました。体験や研修ツアーなども行ってきました。

空と土プロジェクトで開墾中の参加者
空と土プロジェクトで開墾中の参加者

大きな課題の1つであったカラマツの未活用もサプライチェーンを再構築し、材として三菱地所ホームやマンションなどで使われるようになりました。こうした経済的側面の効果は大きいのですが、復田することにより農村景観が再生し、カラマツの活用により森林保全といった環境的側面にも良い影響をもたらしています。また、過疎・高齢化が進み、集落維持活動が十分行えないという社会的課題に対し、地元で「郷役」と呼ばれている水路の清掃や電気柵修繕にも参加するなど活動の幅を広げてきました。さらに今年からは耕作放棄地を再生したことによる生物多様性への影響調査も開始しました。6月に行われた「生きもの調査」に参加した大人たちが子供顔負けに目をキラキラさせて、水中の生きものを探していた姿が印象的でした。

開墾後の棚田
開墾後の棚田

私は「世界農業遺産」(国連食糧農業機関)という制度の国内専門家会議の委員を務めていますが、世界農業遺産は、「社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形づくられてきた伝統的な農業に、それに関わり育まれた文化、ランドスケープ、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農業システムを認定する仕組」(定義は農林水産省による)です。また、SDGsの目標2(飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する)をはじめ、多くの目標と深いかかわりを有しています。
これからの「空と土プロジェクト」の活動を展望するとき、例えば、地元に移住した若い世代などと一緒に地域のお祭りを復活させる、昔栽培されていた地域固有の農産物を復活させる、水源まで探検してみる・・・など増冨地区固有の農林業や農耕文化ついて調べてみると新しい発見があるのではないでしょうか。

ソーシャルアクションプロデューサー/一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス(LBA)共同代表 大和田順子さん

大和田順子 Owada,Junko

地域力創造アドバイザー/
一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表

百貨店、シンクタンク、英国化粧品ブランド、環境コンサルティング会社等で20数年マーケティングの実務等を経て2006年独立。2002年、日本にLOHAS(ロハス)を紹介。
全国各地で世界農業遺産、有機農業や生物多様性、再生可能エネルギーを活かした交流人口の創出や“持続可能な地域づくり”プロジェクトに参画。
農林水産省・世界農業遺産等専門家会議委員。立教大学21世紀社会デザイン研究科「サステナブルコミュニティ演習」、静岡文化芸術大学「食文化論」等の非常勤講師主な著書に『ロハスビジネス』(朝日新書)、『アグリ・コミュニティビジネス』(学芸出版社)など。

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