ソラツチコラム

空と土プロジェクト10周年記念

良い交流を作り出すきっかけは、美味しい食べ物とお酒

大塚洋一郎 さん

大塚洋一郎

「空と土プロジェクト」は企業がかかわる都市農山村交流の大きな成功事例です。 私は10年前、「NPO法人えがおつなげて(曽根原久司代表理事)」の開墾ツアーに参加したことがきっかけでこの分野に入り、「NPO法人農商工連携サポートセンター」を立ち上げ、都市農山村交流に携わってきました。

よく「大塚さん、やっていることはわかるけれどそれがどのくらい社会の役に立つの?」と聞かれます。わかりやすい指標は「売上」と「交流の人数」です。例えば私たちのNPOのイベント参加人数は年間だいたい1,000人、売上は年間4,000万円です。私は売上より交流人数、さらにいうと交流の「質」が圧倒的に重要だと思います。

NPO設立当初は、農商工連携で○○市の特産品を使って商品開発をし、年間売上2,000万円を目指そうとしましたが、さっぱりうまく行きませんでしたし、面白くありませんでした。そこで途中から「交流を目指そう」と方針を変えてからいろいろと回り出し、結果としてある程度の売上もついてくるようになりました。

交流の質の定量化は難しいですが、ひとつ確実に言えることは、良い交流を作り出す最良のきっかけは美味しい食べ物とお酒だということです。良い交流とは、ツアーやイベントが終わった後に参加者の意識が変わるような交流です。意識といっても難しいものではなく、例えば「島根県邑南町(おおなんちょう)のお酒は美味しかった、人も面白そう、いつか行ってみたいな」と思ってくれれば大成功です。銀座の街角で邑南町のパンフレットを配っても誰も受け取りませんが、美味しいものをいただき、楽しいお話を聞いた後には邑南町という土地にちょっぴり愛着を感じています。私は地域の市町村の方々に「少人数でいいのでコアなファンを作りましょう」と呼び掛けています。食文化は県単位では広すぎるので、あくまで市町村にこだわっています。

東京都千代田区神田に市町村のアンテナショップ「ちよだいちば」を4年前に開設して市町村の商品を販売し、神田で働いている方々にそれを食べてもらい、月に1回「○○町のちょい飲み」という飲み会を開催して地域の方々との交流を深めています。

愛媛県西予市遊子川(ゆすかわ)という人口300人弱の小さな集落があります。6年前、この集落のお母さんのグループ「ザ・リコピンズ」が地域でとれるトマトの規格外品を使って商品開発を始めました。試行錯誤の末「トマトユズポン」「こどもケチャップ」という商品が生まれ、じわじわと売上を伸ばしていきました。私たちはこの取り組みを開発段階からサポートしてきました。「ちよだいちば」でも美味しいと評判になり、「ザ・リコピンズに会いに行こう!」というツアーは1週間で満席になりました。彼女たちの取組は、2018年「ディスカバー農山漁村(むら)の宝(※)」など数々の賞を受賞し注目されるようになってきました。(※農山漁村で地域の活性化、所得向上に取り組んでいる優良事例を選定し、農林水産省が全国に発信するもの。)

遊子川のちょい飲み
遊子川のちょい飲み@アンテナショップ「ちよだいちば」
ザ・リコピンズに会いに行こう!ツアー
「ザ・リコピンズに会いに行こう!」ツアー

「空と土プロジェクト」の交流は年間370人、累計で2,324人。着実に北杜市増富地域のコアなファンを増やしています。増富ももちろん変わってきましたが、もっと大きいのはそこを訪れる人の意識を「食と農」に向けさせ、その人の人生をより豊かにしてきたことです。これからも企業がかかわる都市農山村交流のリーディングプロジェクトとして質量ともに良い交流を紡いでくださることを期待しています。

NPO法人農商工連携サポートセンター代表理事 大塚洋一郎さん

大塚洋一郎 Otsuka,Yoichiro

NPO法人農商工連携サポートセンター代表理事

昭和29年、東京生まれ。北海道大学工学部原子工学科(修士課程)を終了し、昭和54年、科学技術庁に入庁。科学技術庁国際課長、文部科学省宇宙開発利用課長などを歴任。平成19年7月より経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)として企業立地、ソーシャルビジネス、農商工連携などの地域活性化施策を担当。農商工連携促進法の制定には当初より参画。農商工連携に関する講演多数。平成21年7月、農商工連携による地域活性化・雇用創出にライフワークとして取り組むことを決意し、公務員を退職。NPO法人農商工連携サポートセンターを設立した。

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