ソラツチコラム

空と土プロジェクト10周年記念

民間活力による地域再生

宮林茂幸 さん

宮林茂幸

2015年09月、国連は、循環型社会に向けての「持続可能な目標設定(SDGs:Sutainable Development Goals)」を採択した。192の国連加盟国が2016年~2030年までに達成できる目標で、全世界で、だれ一人取り残すことのない安心・安全な社会へむけての基本目標として、平和・平等・食料・環境・教育・経済・社会など17項目について規定し、具体的なターゲット169を設定している。1992年のリオデジャネイロ地球サミット(国連環境開発会議)でSD(持続可能な開発:Sutainable Development)が採択されて以降、1993年の生物多様性条約、1994年の気候変動枠組条約、1996年の砂漠化対処条約、そして1997年の京都議定書など立て続けに環境悪化が進む宇宙船地球号を守るべく環境保全に関わる国際的な枠組みを採択してきた。しかし、2008年のリーマンッショックによる米国経済の激震は、瞬く間に世界金融不況を拡大させ、新自由主義経済を強振する結果となった。わが国においても第二次安倍内閣によるデフレ経済脱却のための第一次「3本の矢」を放つものの、益々国内消費が低迷し、さらに第二次「3本の矢」を放つものの国民経済は相変わらず低迷を続け、経済の不均衡発展が生まれている。こうした経済情勢にあって、世界的に進みつつあった環境経済政策は、大国の京都議定書からの離脱など大きく経済優先至上主義へと再転換することとなった。つまり、経済社会の低迷とともに環境政策は足踏み状態を余儀なくされた格好にあった。ところが、その間に地球温暖化や気候変動による異常気象は、急速に発展し、ツバル島(首都ナフチカでは、温暖化による海面上昇によって「海に沈む島」として報道)に明らかなように、地球温暖化・異常気象や水資源問題などの環境破壊が急速に進むこととなった。

2012年の地球サミット(リオ+20)は、第一回目の地球サミット(1992年)から20年を経た段階で、今地球上でどんな環境問題が起こっているのか、20年間にどのような環境対策が進められたのかなど、日常的に悪化する環境問題を捉え直し、グリーンエコノミー国際的枠組を採択した。まさに、持続的な循環型社会を具体的に造る手法として、全世界がグリーンエコノミーを意識した経済政策に転換することを示すものであった。

こうした環境経済社会の転換は、リオ+20を境にして加速し始めている。2014年ESD(持続可能な開発のための教育)の世界会議が名古屋で行われ、2015年にはSDGsがパリ会議において採択された。これは、循環型差社会を目指すための国際的目標を示すもので、経済社会の大転換の時代に入った。いままで、経済政策目標の取り方によって環境政策は浮き沈みする傾向にあったが、ここに来て環境政策を優先に据えた全世界の目標をあらゆる分野で掲げ、全員で推進するという具体的な運動政策が示された。さらに、2018年12月には「小農宣言」が採択され、安心・安全な食料生産として2019年から2028年までを「家族農業の10年」と定め、地域に根ざした小農経営や家族農業を優先とすることとなった。これは環境保全の側面からも重要な示唆を与えることとなった。

日本の国土は、極めて急峻で、土壌が細かく柔らかいため、集中号に脆弱な要素を有している。台風や季節的な豪雨も多く、近年では局地的豪雨や大型台風が襲来している。こうした中で、土地管理を優先とした小農経営や家族農業が中山間地を中心に進められ、農・林・水をトータルとした自然循環型の里山文化を形成してきた。自然条件が厳しく、土地基盤の脆弱な環境にあって、毎年行われる極め細かい土地管理や台風・集中豪雨時における水管理を欠かさない小農経営こそが国土を守り、地域のコミュニティを形成し、優れた里山文化を形成してきた。

わが国は、少子高齢化によって、今世紀の終盤には、地方自治体の半分が消滅するという。それは国土保全の最前線基地である中山間地域を大きく崩壊することとなり、国家にとっては安全保障に匹敵する課題となろう。

こうした中で、三菱地所の「空土プロジェクト」は、農山村を小農経営的に捉え、上流域の農山村と都市の住民を結びつけ、相互が協働しながら里山を再生するというもので、事業10年カ年が過ぎて地域における小農経営が花を開き、酒の文化や水の文化あるいは農山村の祭の文化を再生している。民間活力による新たな地域創生のあり方として期待したい。

東京農業大学教授、地域環境科学部長 2017年04月東京農業大学 地域環境科学部 地域創成科学科 地域デザイン研究室 教授 宮林茂幸さん

宮林茂幸 Miyabayashi,Shigeyuki

東京農業大学教授、地域環境科学部長
2017年04月東京農業大学 地域環境科学部 地域創成科学科 地域デザイン研究室 教授

【専門分野】
林業経済学、森林政策学、森林環境政策学、森林レクリエーション学
【主な研究テーマ】
地域振興と森林レクリエーション、山村と都市の交流、地域開発とむらおこし、市民参加による森林管理、森林体験と環境教育、流域連携と流域共生圏など。
【社会活動】
日本森林学会評議員、林業経済学会評議員、日本緑化センター理事、大日本山林会理事、せたがやトラストまちづくり協会理事、東京都森林審議会委員、群馬県上下流連携支援センター理事長、多摩川源流大学運営委員長、多摩川源流研究所運営委員長、美しい森林づくり全国推進会議事務局長、山村再生支援センター代表

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