- 2017年3月のアーカイブ

みどりの風が吹く"疎開"の町(鳥取県智頭町)

一年ほど前、「たき火」をシンボルとしたライフスタイルについて書いたことがあります。
「たき火フェスタ」というイベントが2016年2月28日、島根県吉賀町柿木村にて開催されました。日本有数の清流である高津川の流域である津和野町、吉賀町、そして益田市の住民向けのイベントでした。

チラシの裏面には「いま、高津川流域ではIUターンをはじめ、多くの子育て世代家族の移住がふえています。それは、ここ高津川流域の豊かな自然の環境中で生活・子育てをしたいと考える親世代が増えているからです。そうした中で「高津川」「たき火」「子育て」「食」「先人の知恵」をキーワードに、親、子、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなで高津川流域の美味しいものを囲んでたき火であたたまり、語り合い、一緒に愉しい時間をすごしましょう」と書かれていました。

実際にイベントに参加してみると、まさにそのコピー通り、たき火を囲んで子供からお年寄りまで楽しそうに過ごしている姿がそこにありました。話を聞いてみると、IUターンなど移住者の方たちが多く、その人たちは新しい仕事として自伐林業や木質バイオマス活用、有機農産物の加工を行い、子育てに"森のようちえん"など屋外保育を利用しているというのです。

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◆ 森のようちえん「まるたんぼう」
森のようちえんといえば、鳥取県智頭町の「まるたんぼう」(2009年開始)が有名です。先日7年ぶりに智頭町を訪問し、その主宰者である西村早栄子さんと再会してきました。私が以前取材したのは東日本大震災前の2010年でした。震災後に智頭町にも30代の子育て世代のIUターンが増えました。その家族は子供を森のようちえんに通わせ、大人たちは森の仕事を始める人が少なくなかったそうです。今では3~5歳のクラスには26人が地元や鳥取市内などから通っていますが、その全員が移住者の子どもたちです。


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森で遊ぶ(2010年7月筆者撮影)


この7年間で、森のようちえんは全国各地に広がり、例えば長野県では、屋外での自然保育に注目し、県として「信州やまほいく(信州型自然保育)」という名称で制度化し、全域で推進しているところです。
県のホームページには「子どもの自己肯定感の向上に効果があるとされる森のようちえん等の自然保育を、戦略的な保育および幼児教育資源として活用し、豊かな子育て環境の整備を通じて子育てにおける保護者のストレス軽減を図り、さらに子育ての楽しさを実感していただくことで、少子化傾向の改善に取り組みます。」とあります。


森林セラピーにも注力
鳥取県智頭町は93%を森林が占める人口7,377人(2017年3月現在)の町です。電車で東京から行く場合、新幹線で姫路へ、そこから特急の乗り換え1時間ほどです。江戸時代から伝統的な育林技術と恵まれた気候条件のもとで、智頭スギを中心に長伐期林業を行ってきた歴史ある先進林業地です。また芦津渓谷は、春は新緑、秋は原生林の紅葉が全山を覆い、その雄大な渓谷美は日本屈指ともいわれています。

林業はもとより、2009年は「森のようちえん」開園(4月)、「森林セラピー推進協議会」設立(7月)、翌年4月「森林セラピー基地」の認定、2011年 「智頭町森林セラピー基地」グランドオープンするなど、森を活かした新しい事業に力を入れてきました。昨年度には東京の企業が2泊3日の「智頭町留学」を研修として行い、森林セラピーや農林業作業を体験するなど、いよいよ企業向けのプログラムに注力する計画です。
http://www1.town.chizu.tottori.jp/town/

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森を仕事にする「智頭ノ森ノ学ビ舎」
IUターンなど若手による森の仕事を作ろうと2015年9月に結成されたのが「智頭ノ森ノ学び舎」です。
町が町有林57haを無償で団体に貸与し、自伐林業の手法など林業を習得する研修を実施しています。

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    左)智頭ノ森ノ学ビ舎 代表 大谷訓大さん 右)鳥取大学 家中茂教授

メンバーが伐採した間伐材は町営プールの薪ボイラーに供給されています。また、町内では薪ストーブの利用も促進しています。地域通貨も活用されており、木材の地域での活用の仕組みが定着しつつあります。

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◆ ローカルビジネスの騎手「タルマーリ」
2015年6月に開業した人気のカフェ「タルマーリ」。私が同店を訪ねるのは3回目のことです。一回目は2011年に千葉県いすみ市、二回目は2013年に岡山県真庭市でした。小さなお子さんのいる渡邊格・麻里子夫妻は東日本大震災後に関西に移住しようと店を岡山に移転。ビールの製造には手狭だったことから、智頭町に再度移転したということです。

地元で採取した酵母を使った天然酵母パンや、クラフトビールの製造・販売、カフェの営業を行っています。廃校となった保育園の施設を改修し、温かい雰囲気の人気店になっており、遠くからもお客さんが来るそうです。移住者や地元住民の雇用を生んでいます。

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◆ 「地方創生」と「地域包括ケア」の統合
智頭町は鳥取大学やNPO法人ドットファイブトーキョーなどが、昨年度から開始したプロジェクト「生業・生活統合型多世代共創コミュニティモデルの開発」(研究代表 家中茂 鳥取大学地域学部 教授)にも協力しています。これは科学技術振興機構 社会技術開発センター(JST-Ristex)が委託をしている「持続可能な多世代共創社会のデザイン」という研究の一環で3年間に渡り行われます。

自伐林業、森林セラピー、森のようちえん、民泊など、森林や里山の多面的な価値を活用して智頭町が取り組んでいる"地方創生"事業(生業)と、住民相互の助け合いを基盤とした"地域包括ケア"福祉の統合モデルを模索することが、本プロジェクトの主眼です。今後もその進展を紹介していきたいと思います。


なお、森のようちえん「まるたんぼう」は、今年は東京都内にも自治体と連携して森のようちえんを開設し、智頭町の認知向上、関心を喚起し、智頭町への来訪、ひいては移住につながるような取り組みを実施する計画です。

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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