農山村の暮らしを体験する「農泊」 (大分県宇佐市安心院)

近年、都市部居住者のみならず、海外の人からの人気が高まっている宿泊形態に「農家民泊」(農村民泊とも)があります。
私もここ数年は宮崎や大分の「世界農業遺産」エリアにうかがうことが多いのですが、なるべく農泊や民宿など、地域の人々の暮らしがわかるところに泊まるようにしています。そうした宿は、その地域ならではの旬の食材を使った郷土料理を楽しみながら、農家のお母さん、おとうさんと親しくお話ができるからです。

先日、大分県宇佐市安心院(あじむ)で約20年前から農泊をしている時枝仁子(ときえだ・まさこ)さんの「百年乃家ときえだ」に、宇佐市内の両合(りょうあい)棚田の再生に取り組む石井康美(こうみ)さんと一緒に泊まりました。
時枝さんは「農林漁家民宿おかあさん100選」にも認定されています。

百年乃家161101.JPG
「百年乃家ときえだ」


安心院におけるグリーンツーリズムの理念

旧安心院町では1996年に「グリーンツーリズム研究会」が発足し、「農村民泊」に全国で初めて取り組み、都市と農村が交流するグリーンツーリズムの先駆けとして注目を集めてきました。現在は「NPO法人安心院グリーンツーリズム研究会」が事務局を担い、国内外からの滞在者の仲介や、研修を行っています。

町内で開催される恒例イベントの「ワイン祭り」の来訪者に、B&B(朝食とベッド)を提供し始めたことが、「会員制農泊」のはじまりとされています。その後、大分県がルールを制定し、農泊は広がり定着していきました。その数は年間1万人を超えるといいます。

その理念は以下の通りです。少し長いですが引用させていただきます。
 

「グリーンツーリズムとは、地域に生きる一人一人が農村での日頃の生活を楽しく送る中で、外からのお客を温かく迎え入れることのできる《豊かに輝く農村》を目指した、新しい農村経営を求める運動である。

グリーンツーリズムとは、都市(消費者)と農村(生産者)のこびることのない心の通った対等な交流を通じ、「知縁(情報で結ばれた親類)関係」となり、共生の道を探すものである。

グリーンツーリズムとは、村における連帯意識を、生活を通し景観から産業まで一体的とりくみを職業的かつ年代的垣根を越えた連携を図る中に行うことにより、地域経済の発展と町全体の活性化を目指すものである。

グリーンツーリズムとは、閉ざされた農村社会の過去のイメージを払拭し、農村婦人の地位と意識の向上ならびに自立を図り、男女共同にして成り立つ「ムラづくり」と魅力的家族関係を作る運動である。

グリーンツーリズムの根付いた農村には、恵みに豊かな自然環境が大切に守られていて、
その中で生きる人々の自信に満ちた笑顔がある。
それを求め、心のせんたくのために足繁く訪れる旅人により町の品位は高まり、経済も潤すことができるものである。

グリーンツーリズムの普及により町が息づけば、次世代を担う子供たちに明るい夢を与え、誇りを持つことができる。」


「両合棚田」でも農泊を始めたい

「国東半島宇佐地域世界農業遺産」認定地域である宇佐市院内(いんない)地区では、今年「両合(りょうあい)棚田再生プロジェクト」が始まりました。そのプロジェクトの中心メンバーの一人が石井康美(こうみ)さんです。60代後半ですが、20歳で農家に嫁いでから約50年、牛、シイタケ、林業といった仕事をしながら3人の子供を育て、義母の介護をし、ようやく少し自分の時間が取れるようになってきたことから、棚田再生プロジェクトに熱心に参画しています。


両合田植え160606.jpg
田植えをする石井康美さんと筆者


旧院内町にある「両合棚田」は棚田100選にも選ばれている棚田で、石橋のかかる小さな川を挟み、両側に棚田が広がるという景観です。かつては写真撮影のスポットとして人気でしたが、近年は獣害がひどく、約8割が耕作放棄状態になっていました。それを、世界農業遺産認定を機に、再度再生させたいと、地域の人たちが立ち上がりました。10年ぶりに復田した田んぼもあり、秋には美しい景観が一部蘇ってきました。

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今年2月の棚田の様子。8割が耕作放棄状態


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9月24日の稲刈り。美しい景観が戻ってきた


そして康美さんはこの両合棚田に泊まってもらえるよう、「私も農家民泊をしてみたい」と思うようになり、勉強の為に一緒に時枝仁子さんのお宅に泊めていただいたわけです。

「両合棚田再生プロジェクト」紹介 

「百年乃家ときえだ」は年間450人(修学旅行250人、国内一般100人、外国人100人)ほどが泊まる人気の農家民泊です。一緒に夕飯の支度をしながら(郷土料理づくりの体験もプログラムの一つです)農泊のことを教えていただきました。また、夕食はスッポンなべをつつきながら、農家に嫁いだ女性の人生や暮らし、国内外の人たちとの交流の楽しさなど色々とお話しをうかがいました。

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時枝夫妻と鍋をつつきながら


農村の女性が輝いていられるように

そして翌朝、部屋にコーヒーを持ってきてくださった仁子(まさこ)さんが「女性活躍ということで大臣や知事に女性がなるにもいいけれど、農家の嫁、女性が輝ける社会になってほしい」と。

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時枝仁子さん


世界農業遺産を支える農林業家、がんばってきた女性たちを、応援したいという気持ちで胸が熱くなりました。

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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

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