- 2016年3月のアーカイブ

世界遺産の茅場(かやば)を再生する。合掌の森再生プロジェクト(富山県南砺市五箇山)

温かい名刺
名刺を差し出すと「この名刺の紙はなんですか? なんだか温かいですね」と言われます。手すき和紙の名刺は触ったときに軽くて温かい感じがします。私の名刺の和紙は富山県南砺市五箇山、世界遺産の里で手すきで作られたものです。よくみると茶色の細かい繊維が入っていますが、これは合掌造りの家の、かやぶき屋根の茅(かや)です。

今から5年前、2011年の秋に、私は五箇山の菅沼集落に住む荒井崇浩さんと出会いました。彼の名刺には合掌造りの写真が載っていて、「この家が私の家です。」と言うのです。菅沼集落には5世帯22人が住んでいますが、合掌造りの建物は9軒です。(2013年3月末)そして「合掌づくりの茅が足りないので、茅場(かやば)の再生プロジェクトを始めたいのです。」と熱く語る彼の構想に、すっかり興味をもってしまいました。どうも"〇〇の再生"と聞くとムクムクと興味が湧いてしまう習性があるようです。

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冬の菅沼集落(2012年2月)


かやぶきの茅はどこから?
さっそく現地に足を運び、合掌造りや周囲の森、茅場などを見せていただきました。また、地元の茅葺職人さんからは、合掌造りの材料は全て周囲の森の木を利用していることを教えていただきました。かつて茅場は急峻な山の斜面に作られていたが、過疎化や高齢化で茅場が減り、今では年間に必要な量の半分くらいは地域外から購入しているというのです。

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急峻な斜面に植えられている(13年5月茅場勉強会にて)


また、茅には大茅(ススキ)や小茅(カリヤス)と二種類があり、五箇山では小茅を栽培し使用されてきました。茅場で栽培された小茅は3年位経つと使えるようになり、秋に刈って乾燥させ屋根材として使用されます。今では森林組合が茅の栽培やかやぶきの作業を担っているそうです。
五箇山では20年に1回、屋根から古茅を降ろし、新しい茅でふき直し、20年の風雪を耐えた茅は、その後畑に敷かれてマルチなどとして活用され、段々と分解して土に戻るなど知らないことばかりでした。循環型の農法とも言えそうです。

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20年に一度のふきかえ(2016年3月)


茅場の再生に企業ボランティアも参加
私が荒井さんと出会った2011年秋に、茅場の再生・維持や周囲の森を保全する活動「合掌の森プロジェクト」がちょうど始まったところだったのです。すでに森林組合により、スキー場にも茅場が造成されていましたが、菅沼集落周辺の空いている場所(約10アール)でも茅場を造ることにしました。茅は11月に大きな茅の株を掘り、いくつかに分け定植していきます。翌年6~9月は下草刈りをし、3年ほど経ったものを秋(10~11月)に刈るという作業です。

その後、茅場の再生・維持や合掌の森プロジェクトは、大学関係者や企業などの共感を得て、茅場が少しずつ増えているところです。例えば、㈱中日本高速道路(ネクスコ中日本)は五箇山インターチェンジがあることなどから同地域と関係が深く、集落の住民組織である越中五箇山菅沼集落保存顕彰会(会長 中島慎一さん)と茅場再生の協定を結び、社員ボランティアにより茅の栽培を始めています。

古茅は畑の敷藁としても使用されるのですが、プロジェクトでは同地域の伝統野菜であるカボチャ「五箇山ぼべら」の栽培を2014年から始めています。ラグビーボールのようなユーモラスな形と名前ですね。昨年度は1トン収穫し、そのコロッケをネクスコ中日本のサービスエリアで販売もされました。

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ぼべらコロッケを販売する五十田由子さん


合掌造りと、その森がふるさと
南砺市地域おこし協力隊の渡邉麻衣さんの発案で、「五箇山ぼべら」の栽培は地元小学校でも5年生により行われ、昨年秋に11個が収穫できました。こどもたちは種取りをして、翌年の5年生に種継(たねつぎ)をするそうです。「ふるさと教育」として始まったものですが、小学生の時から茅づくりや「五箇山ぼべら」づくりに関わることで、ここにしかない暮らしや営みへの誇りが育まれていくのでしょう。

五箇山の世界遺産は合掌造りの建物といった文化財建造物を保護するだけでなく、周囲の茅場や森も一体となって暮らしが営まれつつ、維持・保存されていくのです。昨年3月には「ふるさと文化財の森」として菅沼集落周辺の茅場3ヘクタールが認定されました。

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都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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