目を覚ませ!放置里山に眠る種たち。 「アーバン・シード・バンク・プロジェクト」スタート!

虫もいない暗い森
"耕作放棄地の開墾"。これは、NPO法人えがおつなげてや「空土プロジェクト」の取組により、すっかりメジャーになりましたが、実はまだまだ大きな問題が里山地域にはあります。それが"放置荒廃里山"です。

日本の森林面積は国土の3分の2ですが、そのうち植林された針葉樹林は約4割です。約5割が天然林でその多くが里山と呼ばれる森です。かつて日本各地の里山は、コナラやクヌギなど炭や薪の原料になる広葉樹林が"薪炭林(しんたんりん)"として循環的に活用・維持されてきました。落ち葉は畑の堆肥に、キノコやシイタケ栽培、山菜、クリ、くるみなどは食料として里山の恵みは暮らしに欠かせないものでした。"里山林"は、人と自然が共に創ってきた森林でした。

宇佐美、山笑う.jpg
昔の里山は笑っていた

ところが戦後、1960年代から燃料として炭や薪は使われなくなり、肥料も化学肥料が主流になっていきました。それにつれ、広葉樹林の間伐は行われなくなり、手入れのされない暗い放置里山が全国に増えていったのです。コナラやクヌギがあっても高樹齢になり樹液が出にくくなり、カブトムシやクワガタなど昆虫も来なくなります。また鹿害も深刻です。若芽を食べ、鹿が嫌うシキミやヒサカキなど常緑の中・低木が増えていきます。生きものも植物も多様性が失われていくのです。

そして、CO2の吸収源として管理された人工林(針葉樹林)はカウントされていますが、人工林も少子高齢化が進み、CO2の吸収量が減ってきています。また、里山は放置されているものがほとんどなので、こちらもCO2を吸収することができません。

森林のCO2吸収量は京都議定書における3.8%から、2030年目標では2.0%に低下しています。それは人工林が高齢化(高樹齢になっている)し、吸収量が減っているからです。将来的にも吸収量が回復することは難しい状況です。このため、日本の森林の6割を占める天然林のうち、せめて集落に近く手入れをしやすい里山林を適切に管理することにより、温暖化対策に活用することが望まれます。手入れをした森林は気候変動枠組み条約の算定対象森林になることから、日本の削減目標を確実に達成するだけでなく、より高い目標設定に里山林が貢献できるというわけです。


眠っていた種子が目を覚ます
このような放置里山の再生に取り組むプロジェクトがあります。「プレゼントツリーfrom熱海の森」です。プレゼントツリーの仕組みについては後ほどご説明しますが、熱海の森は静岡県熱海市下多賀地区に位置する8ヘクタールの広葉樹林です。NPO法人環境リレーションズ研究所が所有・管理しています。かつては薪炭林として活用されていた森もすっかり鬱蒼とした暗い森、鹿ばかりが暮らす森になっていました。地元には森林組合も無く、自治体に森林を管轄する部署すらないそうです。

2010年、熱海の森の再生活動は始まりました。神奈川県内に住むシニアのボランティアメンバーにより除伐を行い、2012年からはコナラやヤマザクラを植樹し始めました。累計約600本、鹿の害から守るために一本一本ネットをかぶせていきました。

シカ害予防.jpg


光が入り明るくなった森に奇跡が起きました。ゴンズイ、アカメガシワ、ムラサキシキブ、ツルウメモドキなどの芽が出てきたのです。"埋土種子"(まいどしゅし)、森の土に眠っていた種が森に光が入ることによって目を覚ましたのです。

このような、真っ暗な里山に未利用資源として眠り続けている休眠埋土種子(シードバンク)から苗を育て、都市の緑化に使うことで、都市の生物多様性を向上させ、里山に人と資金を流す仕組み。そんな継続的な里山再生を狙うのが"アーバン・シード・バンク" プロジェクトです。


実生芽生え.jpg
目覚めた実生たち


環境リレーションズ研究所理事長の鈴木敦子さんは、熱海の森のモデルを、「少し頑張ればどこでも同じようにできる里山保全の仕組みとして広く普及させ、天然林の6割を占める里山を再生し、農山村を元気にしていきたい!」と熱く語ってくれました。


人生の記念日に樹を植えよう!
「プレゼントツリー」は、「人生の記念日に樹を植えよう!」を合言葉に、大切な人や自分の大切な日、誕生日や結婚式などに記念樹を植え、森林再生と地域振興につなげるプロジェクトで、認定NPO法人環境リレーションズ研究所が2005年より運営してきました。10年間で全国22か所、10万本を超える植樹を約300万人の支援者に支えられながら実施してきました。

都市部の人が苗木の里親になり、植樹されている中山間地域を訪問することにより、地域の人と交流が生まれ、森だけでなく地域も元気になっていくのです。プロジェクトスタート時は個人の利用者が多かったそうですが、最近は9割が企業の利用だそうです。

植樹の目的は、森林再生の啓発や水源涵養林の育成、里山保全対策などです。中には口蹄疫の被害を受けた宮崎県川南町の復興祈念や、皆伐放棄地に植樹することで土砂災害を予防しようという宮崎県高原町での取組もあります。

また、東日本大震災の被災地でも2012年に岩手県宮古市、2014年は宮城県大崎市鳴子の森、そして2015年度には福島県広野町にもできるそうです。広野町は現在造成が進んでいる防災緑地にできるそうですから、一から森を作り出すことになりますね。交流で復興を応援する趣旨です。


植樹15鳴子.jpg
宮城県大崎市鳴子の森植樹(2014年9月)


目覚めた里山の苗で都市を緑化
そして、2015年6月にスタートしたのが「"アーバン・シード・バンク"プロジェト」です。熱海の森で眠りから覚めた苗など、里山生まれの苗を寄せ植えにした"里山ユニット"を、都市の緑化に活用しようというものです。個人の家庭の庭やベランダ、企業の社屋、商業施設、マンションの植栽など、設置場所は沢山ありますね。


1506里山ユニット.jpg
里山の苗木が寄せ植えされた「里山ユニット」


プロジェクトの事務局はプレゼントツリーを運営するNPO法人の理事長である鈴木敦子さんが代表を務める株式会社環境ビジネスエージェンシー。「この里山ユニットを活用し、2020年の東京オリンピックに向けて、東京の街角を、路地を、里山の緑でいっぱいにしたい」と鈴木さんの夢は広がります!

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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

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