- 2014年2月のアーカイブ

地元産の大豆にこだわる とうふ工房わたなべ (埼玉県都幾川町)

埼玉県小川町で40年以上有機農業を行っている「霜里農場」(農場主 金子美登さん)の一角にある貸し菜園「しもざと桜ファーム」を私は2年前から借りて野菜作りをしています。自宅のある世田谷区からは道が空いているときでも1時間位かかりますが、その有機の里の魅力、景色や農家、地元や近隣のお店、温泉など魅力が沢山あって通っています。定番の立ち寄り店の一つが隣町のとうふ工房わたなべです。

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その豆腐店は年商3億円を超えるほどの繁盛店です。これといった観光名所がある場所でもありませんが、毎日たくさんの人が車で買い物に来ます。中でも人気なのが「霜里豆腐」。原料は隣の小川町下里地区で作られている無農薬大豆です。400gで320円と安くはありませんが、こくがあって、甘みがあって、一度食べたら、また食べたくなる、近所にお土産に配りたくなるようなお豆腐です。原料の大豆は「おがわ青山在来」。種継ぎされてきた地大豆です。

「とうふ工房わたなべ」の渡邊一美社長(61歳、昭和28年10月28日生まれ)は、なぜ地元の大豆を使った豆腐づくりを始めたのでしょうか。渡邊さんは商業高校を出て、大学では経営学部を学びました。会計学専攻で、税理士か、会計士になりたいと思って勉強した。大学院まで進み、その後、父から豆腐店を手伝って欲しいと言われ一緒に仕事を始めました。

田舎町の小さな豆腐店でしたが、経営学を学んだ渡邊さんは、地元のスーパーマーケットに次々に売り込みに行き、取扱高を増やしていきました。ところが、平成に入り、先行しているスーパーは大型化し、地元の中小スーパーは倒産していきました。不運なことに、渡邊さんの取引先のスーパーも次々に倒産。年商6千万あった売上げが半分くらいになってしまったといいます。ナショナルチェーンの大きなスーパーと取引するには設備を近代化する必要があるが、そんな投資はできない。しかも、残っている取引先のスーパーには行くたびに安くしろ、安くしろと言われたそうです。

「当時、「商売を大きくするには消費者ニーズをつかめ」、と言われていましたが、スーパーの仕入れ担当者や店長は、日々お客さんと接しているんですから消費者ニーズを知っているんだと思っていました。安くしろ、安くしろと言うので、それはお客さんは安い豆腐を必要としている、望んでいるのかと思ってたんですよ。」

結局できる限り機械化し、効率化し、時間短縮をし、そして外国産の安って安い豆腐を作るようになりました。当時北海道産は1kg300円、輸入もので品質の良いものが100円でした。
「でも、100円の大豆で作った豆腐、自分で食べても美味しくないんです。昔はわたなべの豆腐は美味しいと言われていたのに、これでいいんだろうかと、悩みは尽きませんでした。」

平成7(1995)年頃、GMO(遺伝子組み換え)問題がクローズアップされ始めました。地元ときがわで食の問題に関心を持っている女性グループの幼なじみから国産大豆の豆腐作りを進められ、隣町で有機農業をしている金子さんとも出会いました。
「金子さんのうわさは前から聞いていてスゴイ人だなと思っていたんです。特に「一軒の農家が50世帯と提携すれば、農業が持続できる。」という話を聞いて目からウロコでした。
大学の経済学部では企業にとって事業拡大は至上命題。現状維持は許されない。利益を再投資するのが経営たるもの、という考え方を教えられ、それを信じてずっと商売してきたわけですから、この考え方には驚きました。
けれど、もし一軒の豆腐屋に1000~2000人のお客さんがいれば商売できるじゃないかと思ったんです。何も全国展開しなくてもいいのかもしれないと。」

そこで、試しに北海道の鶴の子大豆で450g、230円の豆腐をつくってみることに。価格は普通の豆腐の3倍位だったが良く売れました。一日で500丁も売れるようになりました。これを契機に平成9年頃から、卸売りから製造直販に舵を切ったのです。

その後、売上げは順調に伸び1億円を超え、会社組織になりました。平成14年に屋号を「わたなべ商店」から「とうふ工房わたなべ」と変え、元の店舗から1分のところに広い敷地を購入し、新店舗をオープンしました。今では平日で200人、土日には約400人のお客さんが来ています。

次に地元産の大豆を導入しました。最初の鳩山町のものでした。小川町下里のものはH13(2001年)から。下里は5トンが上限で、面積の関係からそれ以上は収穫できません。H19年は埼玉県下で鳩山町、小川町、嵐山町、熊谷市、深谷市まで広がり、合計で63トンほどです。

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大豆の販売も。有機栽培の青山在来

「私は地元にこだわっています。地域循環型経済とでも言いましょうか。このあたりは中山間地域ですが、こうした地域の農家を守りたいんです。
金子さんと10年ほどお付き合いする中で色々教えられました。金子さんは50年、100年先を見てやっているんです。哲学を持った農業者。物事を金銭で判断しない。誠実でかけひきの無い人ですね。本当に信頼しています。」

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とうふ工房わたなべのこだわりは"素性のわかる"ものづくりです。経営理念として次のように書かれています。
誰が作った大豆なのか、誰が作った豆腐なのか、非常に簡単なようですが現代の流通機構では、食品の素性を知りたくてもなかなかむずかしいようです。大豆を作る人、豆腐を作る人、配達をする人、買ってくれる人、食べてくれる人、みんなが顔見知りになり、この人のために大豆を作る、豆腐を作る、配達をする、この人が作った大豆だから、豆腐だから安心、人と人とのつながりの中に結ばれる「信頼関係」、そして「安心感」が大切です。  
とうふ工房わたなべは、安全で体によい食品、それはこんな人間関係から生まれてくると考えています。これからも、社会のさまざまな約束事を守り、豆腐づくりを通じて地元農家とお客様との橋渡しをしてまいります。」


小川にしてもときがわにしても、大規模農業の地域ではありません。そうした地域の自然や農業を守るには、金子さんと渡邊さんの協力関係のように、地元の農家と加工業者、そして顧客が共通の思いを持って協力することが鍵だと学びました。

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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