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「なんと里山元気塾」コミュニティをデザインする人の出会いの場 (富山県南砺市)

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科には、「コミュティデザイン学演習」があります。そこで講座を担当するようになって3年目になります。社会人の方が多い夜間の大学院で、日中は会社や役所などでお仕事をしつつ、夜と週末に学んでいらっしゃいます。昨年までは「コミュニティ・ソリューション論」を、今年から「サステナブル・コミュニティ論」を担当しています。

それにつれて"コミュニティ"とは?と考える機会が増えました。特にこの数年は地方の農山村に行き、地域づくりに関わる機会が増えましたので、農山村のコミュニティについて関心を寄せてきました。地域づくりはまさにコミュニティづくりであり、元気な地域をつくるには、元気な人のコミュニティ(集う場)が欠かせません。

今年5月に出版された、『クリエイティブ・コミュニティ・デザイン』という本があります。編集家でプロジェクトデザイナーの紫牟田伸子(しむた・のぶこ)さん監修で、30代のアーティストや建築家などクリエイターの方が主な執筆者ですが、立教21世紀社会デザイン研究科からも、教授の中村陽一先生、兼任講師のマエキタミヤコさん、そして私も少し寄稿しました。

本の編者である紫牟田伸子さんは言います。
「コミュニティクリエイティブ・コミュニティ・デザインとは、「コミュニティが創造的であるためのデザイン」という意味。
今求められているコミュニティは、創造性の高い、活力を醸成することができるコミュニティです
ひとりひとりがそれぞれのやり方で創造性を発揮できる。
気持ちの共有が表現される。
多様性が内包されている。
向かうべきビジョンが自然と醸成されていく。
どのような関心を持った人でも参加することができる許容力がある。
そんな、人と人、人とまちがコミュニケートできるようなデザインが必要なのです。」

◆ 地域づくりはコミュニティづくり

私が地域づくりに関わるようになって4年ほどが経ちますが、紫牟田さんが言うことを実感するようになりました。地域外の専門家がどんなプロモーションプランや、研究を行っても、多少プラスにはなるかもしれませんが、継続的に活気ある活動が、地域で自転するためには、地域の人たちが主体的にかかわり、自ら考え、実践しないとそれは実現しないと。

そこで、縁あってある地域に通う機会がある場合には、まずは地域の人によるコミュニティづくり、地域の多様な人が参加し、楽しく話し合える場をつくることに注力することにしました。たいていは○○ワークショップとか、○○勉強会など、参加型の複数回の講座スタイルをとっています。例えば最近では2月~5月、6回に渡って行った「なんと里山元気塾」(富山県南砺市)がその例です。

南砺市との出会いは一昨年秋の「スローライフフォーラムとなみ野」に始まり、昨年秋に「第4回ローカルサミットin南砺」と2年連続して利賀や城端に行く機会があり、「いったいなぜ、私は南砺に呼ばれているのかしら??」と思ったものでした。その後、昨年11月に飛騨市で開かれた「全国町並みゼミ」でも南砺関係者に会い、これはもう関わりをもちなさい、という土地からのメッセージだと、勝手に思うことにしました。

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◆ 世界遺産・合掌の里から散居村の田園まで
 
南砺市(なんとし)は、富山県西部に位置する平野部と山岳部を併せ持つ、人口約54,000人の市です。2004年に8町村が合併してできた市です。山間部には、世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」の五箇山(ごかやま:旧平村、旧上平村、旧利賀村を合わせた地域)があります。利賀は、演劇祭で世界的に有名です。平野部には落ち着いた街並みの城端(じょうはな)、木彫刻で有名な井波(いなみ)や、散居村(さんきょそん)の美しい田園地帯が広がっています。

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世界遺産・菅沼集落(五箇山)。積雪2mの豪雪地区

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屋敷林に囲まれた家が点在する散居村


江戸時代は加賀藩に属し、金沢市に隣接していることから、加賀文化の影響を深く受けています。合掌集落では養蚕、紙すきに加えて、加賀藩向けに火薬の原料となる塩硝を生産していたそうです。城端の絹織物、井波の木彫など、色々な技が"業"として配置されていました。

信仰心が強く、熱心な浄土真宗の地域です。各家庭には大きな仏壇があり、毎朝お経をあげるのが日課です。また、この地域では「土徳」(どとく)という言葉も大切にされています。「土」は土地や地域、「徳」は恩恵、おかげさまの心で、見えない力に守られ、あらゆる心に感謝する意味だそうです。南砺の人々は、信仰心や「土徳」の心をよりどころに暮らしているのです。

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真宗大谷派井波別院瑞泉寺の山門(井波)


◆ 里山のめぐみを活かしたビジネスで 地域を元気にしたい方 大募集!!

「なんと里山元気塾」は、次のような呼びかけで参加者を募集しました。

「東日本大震災以来、日本各地で、地域の食・再生可能エネルギーの自給率向上を図る取り組みが活発化しています。南砺市は、散居の広大な農地や山の森林、豊富な雪解け水など、日本有数の"里山のめぐみ"をもっています。これらを活用し、さらには未来の子供たちへ継承するために、循環型の暮らし方や里山のめぐみを活用した、環境に配慮した新しいビジネスについて考える必要があります。

本講座では、地域内にある里山のめぐみ(農産物・森林資源・草資源・水資源、新エネルギー資源など...)を発掘し、そこからアグリ・コミュニティビジネス、CSA(地域に支えられた農業)、CSR(企業の社会的責任)など、新たな「ヒト・モノ・経済の循環システム」を生む術を学び、実際に行動できる人材を育成します。

里山の環境を守って活かす、新時代のビジネスに取り組みたい方にはぴったりの講座です。次代を担う意欲ある皆さん、新しい挑戦に一歩踏み込みませんか?」

1回目は公開講座で、2回目以降ワークショップ(地域ビジョン/地域資源の把握/持続可能社会を目指す企業・消費者ニーズの把握)や講義(地域ブランティング、環境に配慮した商品開発/再生可能エネルギーの事業化など)、個人ワークやグループワークなど通じて企画を練っていきました。

毎回、会場は市内各地を巡回し、講座の翌日は有志参加によるフィールドワークを行い、講師含め、その地域の魅力・資源を改めて訪ねる機会ともしました。毎回、里から山から、20代~60代まで、男性も女性も半々位、職業や所属も農業、半農半X、自営業(食関連の方多し)、和紙関連、観光、NPO、市議会議員、自治体職員と多様でした。

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中間報告会。発表者も参加者も熱心!

そして、最終回(5/8)はプラン発表会でした。田中市長も参加され、40人近くが山里の利賀「瞑想の里」に集合しました。5つの発表があり、その後深夜まで懇親会が行われました。

<発表プラン>
1.「なんとの山でエネルギーの自給を!」 間伐残材資源化プロジェクト
2.「アグリ・キャンプ」 エネルギー自給区づくり
3.「合掌の森再生プロジェクト」 世界遺産合掌集落茅場の再生/古茅の活用
4.「いちご観光農園」を核としたCSAプロジェクト
5.「南砺のはしわたし」 地元の間伐材と工藝の技を活かした箸づくり

いずれも楽しくてワクワクする質の高いプランが提案されました。
さあ、どうやってこれらを実現して行きましょうか!?

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利賀のごちそうはいつも最高。山菜、岩魚、熊汁も


◆ なんと里山元気塾、楽しさの秘訣は"合力"の心!?

この「なんと里山元気塾」、不思議だったのは回を追うごとに参加人数が増えていったことでした。一般的に、この種の勉強会は課題が出たり、発表があったりと、だんだんと参加人数が減っていくことが多いのですが、どうも元気塾は「盛り上がっているよ」、「楽しいよ」という評判が口コミで広がっていったようなのです。フェイスブック上にグループを作りましたが、当初30人程度だった登録者が最後には60人を超えていたほどです。

そこで思い出したのが南砺の方たちの信仰心と「土徳(どとく)」の精神でした。市内には大きな家が多く、三世代家族が少なくありません。お祖父さんの読経で毎日が始まるのですが、夏休みともなれば子供たちも一緒にお経をあげる家庭も少なくないそうです。

また、毎回事務局がお願いしなくても自慢(時に試作中だったり)の品を持ち寄ってこられる方々があって、勉強会の後はプチ試食タイムでもありました。そして、会場も毎回地区を変えました。二日目のフィールドワークも自慢の田畑や設備を一緒に歩いたりと。プログラムが多彩だったことも人気の理由かもしれません。また、参加者の多様性もまた、塾の魅力の大きな要素でした。そして、日頃から交流のある方々が高岡や富山からも参加され、盛り上げて下さったことも大きかったのでしょう。

そして、もう一つが"合力(こうりゃく)"の精神です。合力とは、富山県の広い地域で使われていた方言で手伝いとか、力を合わせるという意味だそうです。

2月3日、大雪警報の出ている吹雪の中で始まった「なんと里山元気塾」。雪どけ、桜、新緑、山菜と季節は移っていきました。南砺ならではの深い自然、農村景観・町並みの美しさ、食材やお料理の美味しさ、そして何よりそこに集った人たちの魅力で、すっかりファンになってしまいました。塾で企画されたプランの数々は、少しずつ形になっていくに違いありません。

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合掌の里・五箇山にも春が来た(菅沼集落)

 
冒頭で紹介した『クリエイティブ・コミュニティ・デザイン』の中で、筆者の一人である西村勇也さんが述べています。
コミュニティをつくる最大の魅力は、人が生き生きと活躍し、互いに貢献し合いながら新しい価値や成果を生み出せること、そしてそれを自ら生み出していけること
ネットワークは人のつながり、チームは目標達成のための活動体、そして、コミュニティは互いに貢献し合う関係が元になっている。」
まさに、自ずから"貢献"する姿勢や、貢献しあう関係が、なんと市民には根付いているからこそ、今回の「なんと里山元気塾」でそれが顕在化したにちがいありません。


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ちょっと寄り道

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雪持ち林の斜面には様々な野草が花をつけて(菅沼集落)

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昼食は囲炉裏端で「岩魚の刺身定食」(菅沼集落)

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おやつはこちらも囲炉裏でいただくお汁粉(相倉集落)

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お土産の定番は福光「石黒種麹店」のお味噌、甘酒、板麹

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城端「大西屋」、魚のなれ寿司もお気に入り

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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