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蕪栗沼ふゆみずたんぼプロジェクト ―総務省「緑の分権改革調査事業」で復興を推進― (宮城県大崎市)

昨年『幸せの経済学』という映画が封切られ話題になりましたね。今年に入っても各地で自主上映会が開かれています。時々、その上映会後のディスカッションにスピーカーとして呼ばれることがあります。日本でも2008年のリーマンショックや、社会の様々な危機(心の危機、経済の危機、気候の危機など)に直面し、さらに大震災・原発事故を経験し、いよいよ信頼やローカル経済、生物多様性、コミュニティ、低炭素を重視した地域社会づくりに舵を切っていこうという動きが加速してきたように思います。暮らしも経済も、ローカルを重視した新たな幸せを求める時代になってきたのではないでしょうか。

こうした時代背景の元、始められたのが総務省"緑の分権改革調査事業"(2009年開始)です。そのコンセプトは「分散自立・地産地消・低炭素型の地域主権型社会へと転換することをめざすものであり、そのために、地域の豊かな自然環境、再生可能なクリーンエネルギー、安全で豊富な食料、歴史文化資産の価値等を最大限活用し、地方公共団体と市民、NPO 等の協働・連携により、地域の自給力と創(そう)富力(ふりょく)を高めるしくみをつくる。」というものです。
 
昨年度、宮城県大崎市が取組む、緑の分権改革調査事業「蕪栗沼ふゆみずたんぼプロジェクト」のコーディネータとして、私は事業をサポートしました。大崎市は、内陸部ですので津波被害はありませんでしたが、橋や道路、公共施設や民家、店舗などに建物に甚大な被害がありました。震災直後は、その復旧作業で市の職員の方たちは不眠不休の毎日でした。そうした時期だからこそ、地域の資源を生かし、周辺の自治体や住民と連携・協働し、地域循環経済のしくみをつくり、復興に取り組んでいこうと、緑の分権改革調査事業に応募され、採択されました。

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冬期、田んぼに水を張る「ふゆみずたんぼ」。蕪栗沼の周辺40ha

「蕪栗沼ふゆみずたんぼプロジェクト」のビジョンは、"自然・生きものと共鳴するいとなみを通じたコミュニティづくり"です。プロジェクト6つの取り組みが行われましたが、その中からいくつかご紹介しましょう。

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毎年9月下旬には4,000km離れたシベリアからマガンが渡ってくる。
最盛期には10万羽を超える。


1) 応援団をつくる。「ふゆみずたんぼ広め隊」

プロジェクトでは、仙台市や大崎市の女性による「ふゆみずたんぼ広め隊!」を組織しました。地元や周辺にお住まいの女性が参加することで、口コミやユニークなアイディアが続々生まれるだろうと考えたからです。蕪栗沼やふゆみずたんぼの魅力やプロジェクトの進捗を、ブログやフェイスブック、ツイッターなどソーシャルメディアを通じて情報発信していただきました。広め隊の皆さんは、研修に参加し、ツアーやマルシェの企画を練り、特に「マルシェジャポン仙台」に出展したブースでは、設営から試食のお料理づくりやその提供まで、積極的に関与してくださいました。

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応援団は個人だけではありません。三菱地所グループと東京・丸の内で食育活動を行う「丸の内シェフズクラブ」(服部幸應会長以下26名のシェフのネットワーク)が2011年11月より開始した「Rebirth東北フードプロジェクト」が仙台ロイヤルパークホテルで昨年11月と今年4月に開催した食イベントや、今年2月に丸の内で開催された宮城の食を応援する「はらくっつい宮城食堂」でも食材の一つとしてふゆみずたんぼのササニシキを使用いただきました。

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2011年11月17日 仙台ロイヤルパークホテルにて

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銀座寿司幸さんによる「ふゆみずたんぼ」のササニシキのチラシ寿司

また、仙台のレストランやホテルにも働きかけ、「蕪栗沼ふゆみずたんぼ美味ツアー」を実施し、仙台ロイヤルパークホテルの池田総料理長や観光関係者に来訪いただきました。

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農家、斉藤肇さんのふゆみずたんぼの真ん中で


2) 美しいメディアをつくる。絵本、ショートムービー

蕪栗沼、ふゆみずたんぼ、渡り鳥など、人と自然の絆による生物多様性の促進や、豊かで幸せな地域コミュニティづくりなどにかかわる物語を伝達するため、絵本『渡り鳥からのメッセージ』と映像(ショートムービー)を制作しました。

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絵本は葉祥明氏が、映像とウェブサイトはThink the Earthの上田壮一氏がプロデュースし、仙台市のクリエイティブプロダクションに制作していただきました。

映像詩「蕪栗沼ふゆみずたんぼ」(秋冬篇)

地元の人にとっては、ふだん見慣れている渡り鳥やふゆみずたんぼの景色ですが、クリエイターの皆さんによって新たな視点で表現され、改めてその美しさに驚かれていました。


3) バイオマスエネルギー。蕪栗沼の葦(よし)からペレットを製造

地元のNPO法人蕪栗ぬまっこくらぶは、これまで主に環境学習などを行ってきましたが、近年は沼の葦に着目し、ペレット化を試みていました。プロジェクトでは、葦を刈り取り、ペレットを製造し、バイオマスエネルギーとしての活用を推進するための実証を行いました。蕪栗沼の葦原1haにて、葦やヤナギを伐採し、葦ペレット4000kg・ヤナギペレット150kgを製造し、効率的な製造プロセスを確立することができました。葦原30haを野焼きから葦ペレットに転換することにより、年間700万円のコスト削減になります。また、陸地化を防ぐことにより、植生の回復につながり、葦は毎年生えることから、1haで年間15トンのCO2削減にもつながることもわかりました。

葦は乾燥させるエネルギーも必要ないし、小規模なペレタイザーを使用し沼周辺でペレット製造を行うことにより、低コストで高効率な製造方法を確立しました。ペレットは"自然や生きものと共鳴する暮らし"に共感する人を対象に、付加価値を付けて今後販売していこうと考えています。この方式を"葦ペレット蕪栗沼方式"と名付けました。

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4) 「ふゆみずたんぼ」を通じた津波被災水田の再生

昨年8月に、このコラムでもレポートしましたが、NPO法人田んぼは、津波被害を受けた農地(水田)の迅速な復興に「ふゆみずたんぼ」が効果があると仮説を立て、昨年度気仙沼の被災水田を再生し、お米を収穫することができました。

その手法をさらに南三陸町入谷地区(58a)、塩竃市浦戸諸島寒風沢島(60a)、石巻市渡波地区(20a)において、農家、NPO、都市部企業、都市部ボランティア等と連携し再生しました。3か所で大小のガレキを撤去し、水を入れ、抑塩効果や生きものの復活状況を調査しました。この調査により、ふゆみずたんぼは抑塩効果および生物多様性促進に有効であることが確認されました。

被災水田再生に関するレポート

そして、今年度は、三次補正予算で募集された「緑の分権・被災地復興モデル調査事業」を活用し、南三陸町、塩竃市(浦戸諸島寒風沢島)と大崎市とで「ふゆみずたんぼネットワーク」を形成し、お米や周辺の海産物を活用した地域連携食ブランドをつくることにしました。復興に向けたしくみづくりです。これを支えるのは、再生・復興にかかわる人々の縁であり、その需要を"縁需"と呼びたいと思います。

※蕪栗沼・ふゆみずたんぼプロジェクト http://kabukuri-tambo.jp/

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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