- 2010年3月のアーカイブ

複業的林業のすすめ。NPO土佐の森・救援隊の取組み

今年は龍馬イヤーですね。私も今年はNHK大河ドラマを見ています。龍馬もさることながら、三菱財閥の祖、岩崎弥太郎氏のインパクト強いですよね。
「高知にきてみいや」ということで、今月は、高知に行ってきました。もう、龍馬一色。1月中旬~「土佐・龍馬であい博」が開催されています。高知駅には立派な駅舎ができ、駅前には博覧会のメイン会場もオープン。

※「土佐・龍馬であい博」 http://www.ryoma-deaihaku.jp/

国土の7割が森林なのに、木材自給率は2割程度

日本の食糧自給率が41%と先進国の中でも最も低いことは良く知られていますが、木材自給率を調べたところ、もっと低いのです。一時は20%を切ったほどでしたが、若干上向いて、それでも24%という現状です。国土の7割が森林であるにも、かかわらず、使用する木材の8割近くを輸入しているのです。

林野庁では、森林の機能として洪水などの災害防止、水源かん養、生物多様性保全や地球温暖化防止などを挙げ、国民の経済や生活の安定に欠くことのできない「緑の社会資本」と位置づけています。

1950年代には9割程度の自給率でしたが、64年の木材輸入自由化を境目に低下の一途をたどり、2000年には18.2%にまで落ち込みました。輸入木材に押され、国産材の需要が減ると、山林の経済価値は下がり、森林の成長に応じて木を間引く間伐さえ十分にできない状態になってしまいました。日本の森の三割が、倒木や土砂崩れなど深刻な被害に見舞われています。森が荒れれば森林の持つ多様な機能も損われます。人手が加わらないことで、森林は危機に瀕しているわけです。

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山の表層が崩れ落ちる(写真は全て:土佐の森・救援隊)


森林ボランティアを組織化

高知県は、森林面積が84%と全国一の森林比率で、2007年度の森林面積は約59万7千ヘクタール。そのうち、約29万9千ヘクタールが人工の民有林で、間伐が必要な森は54%にものぼります。県は、山林を集約化した大規模林業を推進し、約100ヘクタール以上を「森の工場」と認定してきました。

ところが、県内の林家約25000戸のうち、所有面積が1~3ヘクタールの小規模林家が約半数あり、高齢化していたり、長年の放置で所有者の境界線が不明であったり、なかなか集約化が進まないのも実情です。

そんな中、高知県中央部、土佐和紙発祥の地として知られる いの町のNPO法人「土佐の森・救援隊」がユニークな取組みをしています。2003年に、森林ボランティアによる森林の整備保全活動(間伐、植樹、近自然作業道の整備等)、グリーンツーリズム活動、その他森林・林業関係のイベント(森林・林業の研修会、講習会、都市と山村の交流会、ボランティア祭り、ログハウス教室等)を実践してきました。2003から4年間で、のべ162回のイベントを開催し、3,842人が参加しました。


◆ 合い言葉は「C材で晩酌しよう」

NPOの事務局長を務める中嶋さん(48歳)は、30代前半まで東京で勤め、その後Uターンし、活動に参加するようになりました。
会員やボランティアのメンバー約90人は、自分の都合の良いときに間伐や搬出作業に参加します。参加者には作業量に応じて「モリ券」という地域通貨が配られます。1枚1,000円相当で、地域のスーパーや飲食店、ガソリンスタンドなど約30か所で使うことができます。収入は月一人数万円、中には10万円を超える人もあります。08年度は約400万円分が使われました。原資は、搬出した木材の販売収入です。A・B材は原木市場へ、C材(端材や切り株、傷ついた材木など)はトン当たり3,000~5,000円で隣町のバイオマス発電施設へ原料として出荷しています。

山に放置されていた林地残材(りんちざんざい)や、端材など住民や会員が軽トラックなどで運び、バイオマス発電施設の原料として利用されるこの仕組みは、「第8回高知エコ産業大賞」(2009年3月、エコデザイン協議会主催)を受賞しました。森林整備が進み、お金は地域で、地域資本のお店を中心に使われます。副業的にちょっとした収入になりますので、「C材で晩酌代を稼ごう」が合い言葉になっているのです。

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C材を運ぶ軽トラックの行列ができる


◆ 副業型林家の育成

地域には、兼業農家がたくさんいますが、林業をする人はほとんどいません。以前は当たり前だった「自分の山は自分で管理する」ということを、今一度、取り戻す活動にも取り組んでいます。これこそが、山村振興・森林環境保全の礎になるとの信念からです。本業を持ちながら、副業で森の手入れをする人を増やそうと、同NPOは"副業型林家"の育成にも力を入れています。森林から木を搬出する機械は高性能の大型機械ですと数千万円もしますが、救援隊が考案した「土佐の森方式軽架線(けいかせん)」と呼ぶ、ワイヤーとウインチで木を林道まで運び出す機具のキットは20万円(ウインチ別)です。3~7人で一日(5h)に5m3程度の木を搬出することが可能です。

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ワイヤーとウインチで木材を運び出す

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土佐の森方式軽架線キット

この簡単な機具や、改めてチェーンソーの使い方を学んでもらい、副業型林家を育成したい、それが健康な森をつくることにつながる、と常々中嶋さんが考えていたところ、県に提案する機会が訪れました。県は、専業での大規模集約型と、小規模の副業型を森づくりの両輪と位置づけ、今年度初めて養成塾を補助事業として予算化(約230万円)したのです。

「少ない投資でしたら始めやすく、止めることも可能です。農家は農閑期に、サラリーマンは土日に森の手入れをすることができます。それによって、生物多様性や水源涵養機能のある、豊かな森づくりが進むのです。」と中島さん。

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100年後を考える森の仕事

中山間地域では、副業ならぬ、"複業"が適しているのではないでしょうか。先月訪れた宮崎県の諸塚村でも、家族で森の仕事をしながら、お茶やシイタケを作り、牛を飼うという農林畜複合経営が行われていました。組合わせる産物は地域によって異なるのでしょうが、農林複合型や、サラリーマン&林複合型、商林、工林など、いろいろな組み合わせが考えられますね。複業は福業!幸せな働き方だと思うのは私だけでしょうか。

NPO土佐の森・救援隊のしくみは今、各地で導入され始めています。同じような状況の各地の農山村に適した方法だからなのでしょう。

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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