2009年10月28日
都市近郊の遊休農地を再生する「株式会社マイファーム」
「空と土プロジェクト」の活動拠点である北杜市須玉町増富地区は、典型的な"限界集落"です。私は、NPOえがおつなげて代表理事の曽根原さんから、限界集落の実態や、増富地区の農地の6割を占める遊休農地(耕作放棄地)を、いかにして再生させてきたのかという話を幾度となくお聞きするうちに、この問題に大きな関心を寄せるようになりました。
農業の現状を調べてみました。全国の農家数は2005年現在、約285万戸あり 、2000年の「農林業センサス」に比べ約27万戸(9.0%)減少しています。高齢化・過疎化が進み、限界集落も増えています。また、全国の耕地面積は約469万ヘクタールですが、耕作放棄地は約38.6万ヘクタールで、前回調査に比べて約4万ヘクタール(12.2%)増加しています。つまり、農家数、農業就業人口、耕作面積がどんどん減り、それにつれて耕作放棄地は増えるし、食糧自給率も下げ止まらないのが現状なんですね。
この耕作を放棄されている田畑ですが、地方の山村の限界集落にばかり存在するのではありません。実は、都市近郊にも、そうした田畑が多くあるのです。農家や農地の所有者は高齢や、他の仕事をしているなどの理由から耕作ができず、一方で都市近郊ですから、野菜を作りたいと思っている市民も周囲に数多くいます。貸したい人と、借りたい人がいるわけです。これらをマッチングして、耕作放棄地33ヘクタールを畑に再生させている会社があると知り、その代表取締役の西辻一真さんにお会いしました。
西辻さんは未だ27才という若さです。福井県の兼業農家の家に育ち、幼い頃から農作業を手伝っていたそうです。そして、将来、農業にかかわる仕事がしたいと思い、大学は農学部を専攻しました。社会に出て数年は企業で修業をしようと、広告代理店に入社しました。社内の事業提案で現在の"耕作放棄地と野菜づくりをしたい市民のマッチング事業"を提案したのですが、ビジネスモデルは面白いが、収益性が低いという理由で採用はされませんでした。そこで、やはり自分で起業して取り組もうと、独立を決意。2007年9月、若干25才で株式会社マイファームを創業しました。
「"自産自消"を志向する人が増えています。自分で野菜を作って、家族で食べる。そんな暮らし方です。何でもかんでもお店で買ってくる。工場や誰かが作ったモノを消費する、という暮し方は変だと思うんです。例え都市に生活していても、少しは自分達で作ることができるんじゃないか、そんな仕組みを提供したいと思いました。」と西辻さん。
この看板が目印
京都にある同社の菜園「マイファーム宇治」に足を運んでみました。宇治茶で有名な宇治の住宅地の中に菜園はありました。マイファームの看板が目印です。隣は住宅と、茶畑と、野菜畑、そして宇治川というようなロケーションです。宇治茶がこんな町中で作られていたことには驚きました。2009年6月にオープンしたもので、50区画あります。うち半分を地元の企業が一括で利用しています。
手前が菜園、奥に茶畑、住宅も隣接
現在関西を中心に、27か所、合計33haの農地を管理し、菜園を運営しています。仕組みとしては、耕作できない地主さんから土地の運営委託を受け、一方で、野菜を作りたい個人や企業にその場所を小分けにして貸し出すというものです。一区画は15㎡で、月の利用料は5,250円。ちなみに我が家では世田谷区の成城学園前にある「アグリス成城」という会員制の貸し菜園を借りて3年目になりますが、それに比べるとマイファームは広さは倍で、費用は半額です。
休憩スペースも併設(「マイファーム久御山」)
菜園は、道具や肥料はマイファームが提供してくれます。また、立命館大学の協力を得て土壌診断を行い、足りない栄養素を有機肥料等で補います。苗や種は会員が持参します。農法は有機や自然農法など、インストラクターによって多少異なります。また、インストラクターは色々と指導してくれます。栽培法や質問にはEメールなどでもやりとりし、きめ細やかに面倒をみてくれるのです。
都市部にあっても、畑は暮らしに安らぎをもたらしてくれます。畑の近くを散歩していて、モンシロチョウが飛んでいたり、テントウムシがいたり、作物が日々大きくなる様子を見ると、なんだか楽しくなります。一方、都市部でも農家の高齢化は進んでいます。「マイファーム」のようなサービスがあることで、農地の緑や安らぎのある環境を維持できるとすれば、そして、少しでも"自産自消"な暮らしをする都市生活者が各地で増えていけば、消費偏重・物質依存な暮しが少しバランスを取り戻せるのではないでしょうか。
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