- 2009年7月のアーカイブ

カンザス州ローレンス市 有機農家訪問記 -合い言葉はローカル&オーガニック! 

◆ NO1サステナブルシティ、ポートランド

去年の春、オレゴン州のポートランドに行ったときのこと。ポートランドは2008年もアメリカで最もサステナブルな町としてランキングされました。このランキングは、サステインレーン社(※)が2005年から調査・発表している「USシティランキング」で、50の大都市をサステナビリティ指標で比較したもの。ランキングの項目は、都市計画、大気・水質、公共交通機関の利用、住宅の取得しやすさ、気候変動・エネルギー政策、地場農業など15項目からなっています。

※サステナブルシティランキング(英文) http://www.sustainlane.com/us-city-rankings/

実際に訪問してみると、アメリカの他の都市のイメージと異なり、市内に路面電車(しかも無料)が縦横に走るなど公共交通機関が充実しています。自転車専用道路やバスにも自転車を載せることができ、オフィスには自転車通勤者のためのシャワールームが完備されているところも少なくありません。そして市内に大学や公園など緑が多く、とても住みやすそうです。また、レストランや食品スーパーではオーガニック食品の品揃えが豊富です。

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市内を走る路面電車

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大学キャンパスもまちに融け込んでいる

行く先々のレストランで店員さんの説明も共通しています。料理やワインの説明に多く出てくる言葉が"オーガニック"と"ローカル"でした。

ナショナルチェーン店ではなく、地元の小売店や生産者の物を誇りに思うのが、ポートランドの人々の基本的な精神のようです。自然食品店と言えば全国的には「ホールフーズ」が有名ですが、ポートランドには「NEW SEASON'S MARKET」という自然食品店があります。10店舗だそうですが、地元の人に愛されています。
ポートランドは"オーガニック"と"ローカル(地元産)"が合い言葉なんですね。 

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地元の食品スーパー。支持を集めている

※ポートランドレポート(2008年4月) http://www.owadajunko.com/archives/2008/04/post_77.html


◆ カンザス州ローレンス市もオーガニック&ローカル

それ以来、"ローカル&オーガニック"というキーワードは、地域を元気にする上で欠かせないと思うようになったのです。そして、今年6月下旬に訪問した、アメリカのカンザス州ローレンス市もまた、"ローカル&オーガニック"がキーワードでした。

カンザス州 はアメリカ合衆国の中西部の州で、グレートプレーンズ(大平原地帯)の中にあり、小麦の栽培や牧畜が盛んです。俗称「アメリカのパンかご」だそうで。カンザスは、「オズの魔法使い」で、主人公のドロシーの故郷として登場することでも知られていますね。 また、昔からカンザス州はアメリカにおける田舎の代名詞になっているそうで、確かにまちを少し離れると、広大なトウモロコシ、大豆畑と牧場が広がっています。

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延々と広がるトウモロコシ畑

シカゴ空港で乗り換え、カンザスシティ空港へ。今回の訪問先であるローレンス市は空港から車で1時間の人口9万人の小さなまちです。市内に3つの大学があり、州内で唯一リベラルなまちです。1970年代から、地域の食は地域で支えようと市民出資型の生協や、有機農業を広めていこうと「カンザス・ルーラル・センター」というNPOができて活動を続けてきました。ダウンタウンに商店街もしっかり残っています。

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ローレンス市の中心商店街。ナショナルブランドはGAP、スターバックスくらい

今回のツアーは「グローバル・パートナーシップ・フォー・ローカル・オーガニック・プログラム」という日米、埼玉県小川町と、カンザス州ローレンス市の有機農業者および有機農業を推進しようと取り組んでいる人々による交流プログラムです。日本からは、小川町で有機農業を38年続けて来た金子美登さんの妻の金子友子さん、有機農業家の岩崎民江さん、地域でミニコミ誌を発行している高橋優子さんやIFOAMジャパンの方々など10名が参加しました。私はツアーを取材するという立場で特別に参加させていただきました。アメリカ側は「カンザス・ルーラル・センター」が、日本は「IFOAMジャパン」が主体となっています。

※グローバル・パートナーシップ・フォー・ローカル・オーガニック・プログラム
http://www.gplof.org/us/


◆ 有機農業にチャレンジする人々

カンザス州は酪農や大規模農業が中心の州です。広大な遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆の慣行農法の畑が広がる風景です。一方で、70年代から家族経営の有機農業も綿々と続けられてきた地域でした。今回訪問した農家は、そうした家族経営の農家が中心です。40代、50代で農業を始めている人も少なくありません。元弁護士、教師、会社役員だった人が、新規で有機農業をはじめたと言います。

その一人、40歳台とお見受けするステファニーさんは、以前は企業でマーケティングやマネジメントを経験され、4年前から農業を始めたパワフルな女性です。1haの畑で野菜と24羽の鶏を飼っています。今年の売上げは400万円位で、コストはスタッフの人件費など500万円かかっているので、今後はさらに野菜の種類を増やしたいと、意欲的です。

コミュニティカレッジ(JCCC:Johnson County Community College)の「サステナブル・アグリカルチャー・アントレプレナーシップ」コースを履修され農業を始めたそうです。このコースのカリキュラムを見てみると、サステナブルアグリカルチャーの実際(秋、春、夏編)や土壌・病害虫管理など農業技術だけでなく、起業へのイントロダクションとして、ビジネスプラン、食品産業でのコンプライアンス、安全性などの時間もありユニークです。このコースはJCCCと、カンザス州立大学園芸リサーチ&普及センターと提携して運営されています。

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「今日タマネギを収穫したのよ」とステファニーさん

そのコミュニティカレッジのレストランで昼食を取りましたが、カンザス州立大学園芸リサーチ&普及センターの農園で作られた有機農産物が料理に使われていました。レストランでも、地域のオーガニック野菜を活用するということですね。建物もすごく洗練されていて、料理といい、建物といい、コミュニティの文化度の高さを感じました。

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コミュニティカレッジのレストラン

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メインはバッファローのステーキ


◆ 有機農家を支えるCSA、ファーマーズマーケット、生活協同組合

こうした有機農家を支える仕組みがあります。CSA、ファーマーズマーケット、生協などです。

CSA(コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャー)は、地域の消費者が生産者と直接関係を持つ仕組みです。地域が支える農業とでもいいましょうか。CSAは、日本の"提携"(「霜里農場」金子さんらが行っている消費者との直接取引)に端を発したもので、今では全米に広がっています。消費者は週に一度決まった場所に野菜を取りに来ます。「ローカルバーガー」という地元の野菜・肉を使ったハンバーガーショップがあり、そこも野菜を配る拠点となっています。

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消費者が週に一回野菜を取りに来る

ファーマーズマーケットは、ローレンスのダウンタウンにある駐車場で毎週日曜の朝に開かれています。80の生産者が出店し、約2000人の地域の住民が買い物に来ます。暮らしに根付いている取組みです。

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朝早くから大勢の人で賑わう

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消費者と生産者の出会い&対話の場でもある

日本からのグループは、地元の素材を使ってちらし寿司や野菜の白和えのデモンストレーションを行いましたが、大勢の方が試食され「レシピーを教えて下さい」と人気でした。

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プロジェクトの概要を説明するダンさん

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デモンストレーション。ちらし寿司、白和え、きんぴらなど
指導は「自由の森学園」で給食の責任者をしている栄養士の泥谷(ひじや)千代子さん
同校の給食にも小川町の有機野菜が使われている


食品小売り店では、「MERC」がとってもユニークでした。1974年に設立され、年会費75ドルの会員制生活協同組合です。売上げは約10億円、会員数は4700人、客数は週に9000人だそうです。
そのミッションは、個人やコミュニティ、環境の健康を促進するためにコミュニティオーナーシップを促進することとあります。つまり、このお店はコミュニティを支えるという強い当事者意識を持ち、それによって、個人や地域、環境の健康が促進されるということです。まさに、ロハス(LOHAS)のコンセプトが実践されている好事例ですね。

また、MERCは、ローレンスで唯一の認証を受けたオーガニック小売店です。店頭の野菜には生産者ごとに何マイル離れているかも表示されているのには驚きました。
かつてワイルドオーツ(数年前にホールフーズに買収されました)が市内に進出しましたが、ローカルを大事にしようと会員や売上げが増え、ワイルドオーツは撤退したそうです。地域住民がいかにローカル(地域)を大切にしているかを語るエピソードですね。

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ローカルな農産物を積極的に扱うコープ「MERC」。町一番の人気店だ

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50キロメ-トル圏内の生産者の農産物を扱う。商品POPにマイル表示も

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組合員の声を掲示。イラストが温かい

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1974年に入会のローリーさん。「最も思い出に残っているのは、ワイルドオーツが町を離れることになったことね。」


一般的にはあまり知られていない埼玉県小川町とカンザス州ローレンス市ですが、いずれも有機農業者が地域の人々の健康や土壌の健康にこだわり、小売店や大学、社会企業家などと連携し、地域にこだわり、地域を元気にしていこうという取組みは、大いに他の地域の参考になるものだと思いました。


※小川町、霜里農場 紹介レポート
 http://www.owadajunko.com/archives/2009/02/post_97.html

※霜里農場WEBサイト http://www.shimosato-farm.com/
埼玉県小川町の霜里農場では隔月で見学会を行っています。次回は9月12日(土)です。

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

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