2010年01月27日
「森林ノ牧場 那須」―自然放牧された牛たちが、ゆったりを草をはむ-
◆ 24時間365日 自然放牧の牛
昨年7月に、栃木県那須町に「森林ノ牧場」がオープンしました。那須は全国有数の酪農地帯であり、また御用邸があるなど、昔から別荘地として人気を得てきたエリアです。牧場へは、高速道の白河IC(東京から約180km。福島県西鄕村)が最寄りで、福島と栃木の県境に位置しています。そこに広がる8haの森林が牧場の敷地です。広葉樹の森林は、適度に間伐され、地面に日差しが良く届いています。現在、ジャージー種の牛10頭と子牛たちが暮しています。一般的な酪農のケージ飼いに比べて、ずいぶんゆったりした飼い方ですね。
訪ねた日は1月下旬の日曜日の午後でしたが、森の奥の方の日なたの藁の上で、柔らかい日差しをうけながら、牛たちは昼寝をしているところでした。ブラッシングしているわけでもないのに、どの牛もけっこう毛づやが良く、平和な光景でした。
森で自然放牧されている牛たち
牛舎はありますが、搾乳の時にしか使いません。ふだん、冬も夏も、夜でも牛たちは森の中で暮しているのです。夏場は牧場に生えている草や木の葉を食べ、冬にはサイレージ(牧草をサイロなどで発酵させたもの)を与えますが、もちろん無農薬の牧草から作られた飼料です。糞は森でするので掃除する必要もありません。森林の堆肥になったり、近くの農家が肥料に活用するなどしています。
◆ 人肌程度に温めたウォームミルクは優しい味が
去年の暮れ、埼玉県小川町の霜里農場の牛乳をホットミルクでいただく機会がありましたが、その牛乳とこの「森林ノ牛乳」は同じ味がしました。ホットミルクと言っても人肌程度に温めるのが私の好みでして。その方が牛乳本来の甘さが引き立つように感じます。このように自然の飼料を食べている牛の乳には季節によって変化があります。夏はさらっと薄めで、冬はコクのある濃厚な味になります。工場で均質化された牛乳とはちょっと違う味です。野菜の味が季節で変わるように、牛乳も本来は季節によって味が変わるんですね。なるほど。
日本の乳牛は飼料効率(与える飼料に対する牛乳の生産量)の良いホルスタインが主流で、一日一頭から60kgの乳が搾られているといいます。「森林ノ牧場」で飼われているジャージー種は、体はやや小ぶりで、牛乳の量も一日10kg程度ですが、乳脂肪分の高い牛乳を出します。
牛乳の殺菌方法は主に3種類あります。63~65度で30分殺菌するパシチャライズ(低温保持殺菌法)、72~85度で15~40秒の高温短時間殺菌法、そして120~135度で1~3秒の超高温短時間殺菌法というもの。80度を超えるとタンパク質が熱によって変成します。スーパーなど日本の一般の小売店で売っているものは、超高温短時間殺菌の物がほとんどです。(世界では、二番目の高温短時間殺菌が主流です。)
森林ノ牧場では、63度で30分という低温保持殺菌法を採用しています。ちなみに私が普段利用している「生活クラブ」の牛乳(「パスチャライズド牛乳」という商品名)も、72度15秒間殺菌で、その乳牛は、100%非遺伝子組み換え、ポストハーベストフリー飼料を食べて育っているそうです。
◆ 乳製品、林業、ツーリズム
「森林ノ牧場」では、取れた乳を牛乳、アイスクリームなどに敷地内の工場で加工して販売しています。牛乳は500ml(630円)、120ml(250円)、カップ入りのアイスとソフトクリームがありますが、いずれも350円です。商品は全て牧場内のカフェでいただくことができますが、牛乳とアイスは新宿の伊勢丹やインターネットでも購入することができます。
牧場内には散策路もありますので、歩きながら子牛に触れることもでき、小さなお子さんに大人気。(大人にも人気です。)私が訪問した日曜日も、小さなお子さん連れの家族が途切れることなく訪れていました。
まだまだユニークな取り組みがあります。ストローベイルハウスという、藁を使った建物や、塀があり、お客様参加型のワークショップなどを通じて作られました。来訪者は地域の人はもちろん、別荘に住んでいる方や、東京などからもいらっしゃいます。
イベントなどにも使われる"蔵"外壁の一部がストローベイル
カフェ店内に収穫された雑穀がディスプレイ
国産材を使った家具はグループ会社「木薫(もっくん)」製のもの
現在、タカキビやアワなど雑穀や大豆の生産にも挑戦し、安全で美味しい食材を生産するとともに、収穫後の茎葉を牛の飼料とするなど、さらに循環型の牧場にしていこうという取組を進めているそうで。地域の力を引き出し、魅力づくりをする拠点となりそうですね。
◆ "つながり"を事業化
同牧場を運営するのはアミタという会社です。アミタは1977年に創業され、工場などから排出される亜鉛など非鉄金属を再資源化するリサイクル事業を行ってきました。その後、環境リスク対策、農林水産業、エネルギー、食といった様々な分野で「循環型システム」を作り、事業化に取り組まれています。「森林ノ牧場」事業も、地域の農林資源と、地域の人や、都会の人との"つながり"を紡ぎ直すプロジェクトと言えるでしょう。
季節は移ろいます。四季折々の牧場の様子、牛や森の様子を見に行ってはいかがですか?
ジャージー牛は目が大きくて、茶色の毛、子牛もとってもかわいいです。牛や自然とのふれあい、ワークショップなど環境学習や体験プログラムが今年も色々実施されるようですよ。
※「森林ノ牧場」(京都府京丹後市にもあります。)
http://www.shinrinno.jp/contents/farm/nasu.html



