みどりの風が吹く"疎開"の町(鳥取県智頭町)

一年ほど前、「たき火」をシンボルとしたライフスタイルについて書いたことがあります。
「たき火フェスタ」というイベントが2016年2月28日、島根県吉賀町柿木村にて開催されました。日本有数の清流である高津川の流域である津和野町、吉賀町、そして益田市の住民向けのイベントでした。

チラシの裏面には「いま、高津川流域ではIUターンをはじめ、多くの子育て世代家族の移住がふえています。それは、ここ高津川流域の豊かな自然の環境中で生活・子育てをしたいと考える親世代が増えているからです。そうした中で「高津川」「たき火」「子育て」「食」「先人の知恵」をキーワードに、親、子、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなで高津川流域の美味しいものを囲んでたき火であたたまり、語り合い、一緒に愉しい時間をすごしましょう」と書かれていました。

実際にイベントに参加してみると、まさにそのコピー通り、たき火を囲んで子供からお年寄りまで楽しそうに過ごしている姿がそこにありました。話を聞いてみると、IUターンなど移住者の方たちが多く、その人たちは新しい仕事として自伐林業や木質バイオマス活用、有機農産物の加工を行い、子育てに"森のようちえん"など屋外保育を利用しているというのです。

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◆ 森のようちえん「まるたんぼう」
森のようちえんといえば、鳥取県智頭町の「まるたんぼう」(2009年開始)が有名です。先日7年ぶりに智頭町を訪問し、その主宰者である西村早栄子さんと再会してきました。私が以前取材したのは東日本大震災前の2010年でした。震災後に智頭町にも30代の子育て世代のIUターンが増えました。その家族は子供を森のようちえんに通わせ、大人たちは森の仕事を始める人が少なくなかったそうです。今では3~5歳のクラスには26人が地元や鳥取市内などから通っていますが、その全員が移住者の子どもたちです。


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森で遊ぶ(2010年7月筆者撮影)


この7年間で、森のようちえんは全国各地に広がり、例えば長野県では、屋外での自然保育に注目し、県として「信州やまほいく(信州型自然保育)」という名称で制度化し、全域で推進しているところです。
県のホームページには「子どもの自己肯定感の向上に効果があるとされる森のようちえん等の自然保育を、戦略的な保育および幼児教育資源として活用し、豊かな子育て環境の整備を通じて子育てにおける保護者のストレス軽減を図り、さらに子育ての楽しさを実感していただくことで、少子化傾向の改善に取り組みます。」とあります。


森林セラピーにも注力
鳥取県智頭町は93%を森林が占める人口7,377人(2017年3月現在)の町です。電車で東京から行く場合、新幹線で姫路へ、そこから特急の乗り換え1時間ほどです。江戸時代から伝統的な育林技術と恵まれた気候条件のもとで、智頭スギを中心に長伐期林業を行ってきた歴史ある先進林業地です。また芦津渓谷は、春は新緑、秋は原生林の紅葉が全山を覆い、その雄大な渓谷美は日本屈指ともいわれています。

林業はもとより、2009年は「森のようちえん」開園(4月)、「森林セラピー推進協議会」設立(7月)、翌年4月「森林セラピー基地」の認定、2011年 「智頭町森林セラピー基地」グランドオープンするなど、森を活かした新しい事業に力を入れてきました。昨年度には東京の企業が2泊3日の「智頭町留学」を研修として行い、森林セラピーや農林業作業を体験するなど、いよいよ企業向けのプログラムに注力する計画です。
http://www1.town.chizu.tottori.jp/town/

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森を仕事にする「智頭ノ森ノ学ビ舎」
IUターンなど若手による森の仕事を作ろうと2015年9月に結成されたのが「智頭ノ森ノ学び舎」です。
町が町有林57haを無償で団体に貸与し、自伐林業の手法など林業を習得する研修を実施しています。

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    左)智頭ノ森ノ学ビ舎 代表 大谷訓大さん 右)鳥取大学 家中茂教授

メンバーが伐採した間伐材は町営プールの薪ボイラーに供給されています。また、町内では薪ストーブの利用も促進しています。地域通貨も活用されており、木材の地域での活用の仕組みが定着しつつあります。

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◆ ローカルビジネスの騎手「タルマーリ」
2015年6月に開業した人気のカフェ「タルマーリ」。私が同店を訪ねるのは3回目のことです。一回目は2011年に千葉県いすみ市、二回目は2013年に岡山県真庭市でした。小さなお子さんのいる渡邊格・麻里子夫妻は東日本大震災後に関西に移住しようと店を岡山に移転。ビールの製造には手狭だったことから、智頭町に再度移転したということです。

地元で採取した酵母を使った天然酵母パンや、クラフトビールの製造・販売、カフェの営業を行っています。廃校となった保育園の施設を改修し、温かい雰囲気の人気店になっており、遠くからもお客さんが来るそうです。移住者や地元住民の雇用を生んでいます。

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◆ 「地方創生」と「地域包括ケア」の統合
智頭町は鳥取大学やNPO法人ドットファイブトーキョーなどが、昨年度から開始したプロジェクト「生業・生活統合型多世代共創コミュニティモデルの開発」(研究代表 家中茂 鳥取大学地域学部 教授)にも協力しています。これは科学技術振興機構 社会技術開発センター(JST-Ristex)が委託をしている「持続可能な多世代共創社会のデザイン」という研究の一環で3年間に渡り行われます。

自伐林業、森林セラピー、森のようちえん、民泊など、森林や里山の多面的な価値を活用して智頭町が取り組んでいる"地方創生"事業(生業)と、住民相互の助け合いを基盤とした"地域包括ケア"福祉の統合モデルを模索することが、本プロジェクトの主眼です。今後もその進展を紹介していきたいと思います。


なお、森のようちえん「まるたんぼう」は、今年は東京都内にも自治体と連携して森のようちえんを開設し、智頭町の認知向上、関心を喚起し、智頭町への来訪、ひいては移住につながるような取り組みを実施する計画です。

長野県をヘルスツーリズムの聖地に

近年「ツーリズム」への関心が高まっていますが、色々な種類がありますね。
「エコツーリズム」「グリーンツーリズム」「ヘルスツーリズム」など。
それぞれの意味を調べてみると・・・

エコツーリズムは、1980年代の後半に登場しました。それまでのマスツーリズムが自然環境を悪化させることがあることから「自然や人文環境を損なわない範囲で、自然観察や先住民の生活や歴史を学ぶ、新しいスタイルの観光形態」と定義されました。20014年に環境省が「エコツーリズム推進会議」を呼びかけ、以後、環境省が主導してきました。(出典:EICネット)

グリーンツーリズムは、「緑豊かな農山漁村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動の総称。都市住民の自然・ふるさと志向とこれに対応して豊かなむらづくりを進めようとする農山漁村の動き、特に、都市と農山漁村の交流を求める動きを背景として、農林水産省が主導。」しています。(出典:EICネット)都市と農山漁村の交流に重きが置かれていますね。

そして、ヘルスツーリズムは、「医学的な根拠に基づく健康回復や維持、増進につながる観光のことである。温泉療法や森林療法、海洋療法(タラソテラピー)のほか、主に医療行為を受けるための手段として行われるメディカルツーリズムなども広義の意味でヘルスツーリズムに含まれる。 近年、官公庁・旅行会社・地方自治体などが連帯して、ヘルスツーリズムに結びつけた観光資源開発が全国各地で行なわれている。」(出典:Wikipedia)とあります。


長寿日本一の長野県

2016年12月7日(水)、「健康長寿・長野県と池田町のヘルスツーリズムの未来を考える集い」が長野県池田町で開催されました。平日の午前にも関わらず200人を超える町民の方が集まり、関心の高さがうかがわれました。前半では長野県知事の阿部守一さん、ナグモクリニック総院長南雲吉則さんが講演されました。

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南雲先生は、がん専門医として30年にわたり尽力されてきました。「がんは早期発見・最新治療で克服できる」と言われてきたが、この30年で患者数は倍増しました。がんが増えた最大の原因は"食生活"であることに思い至り、食生活を見直すことで、次の30年にがん死亡率を半減させようと、近年は「がんから命を救う食事と生活術」を提唱。「命の食事プロジェクト」を発足しました。

長野県は長寿日本一です。阿部知事から長寿の理由として、野菜の摂取量が日本一であるとか、「ACEプロジェクト」など長野県が進めてきた長寿・健康政策について紹介されました。「ACEプロジェクト」の「ACEは脳卒中等の生活習慣病予防に効果のあるAction(体を動かす)、Check(健診を受ける)、Eat(健康に食べる)を表し、世界で一番(ACE)の健康長寿を目指す想いを込めたもので」県民運動を展開しています。


県内に11の森林セラピー基地

また、「森林セラピー基地」が県内に11あり、国内で最も多く、さらに「日帰り温泉」数も日本一です。今後は豊かな自然と健康的な暮らしをヘルスツーリズムに生かし、県内の観光や関連産業の活性化に繋げていくそうです。

森林セラピーとは、科学的に検証された森林浴の癒やし効果を、心身の健康や病気予防に生かす取り組みです。「森林セラピー基地」は、リラックス効果が森林医学の面から専門家に実証され、さらに、 関連施設などの自然・社会条件が一定の水準で整備されている地域で、NPO法人森林セラピーソサエティが認定。全国で62カ所となっています。


メンタルヘルス対策に森林の豊かな自然が有効

後半のパネルディスカッションでは長野県森林セラピーアドバイザーの浅原武志さんのコーディネートのもと、「花とハーブの町」を掲げる池田町の甕(もたい)聖章(きよあき)町長、地元でジャーマンカモミールの有機栽培、入浴剤等の製造、宿泊施設の運営を行う「カミツレの里」の北條(きたじょう)裕子社長、日本通運健康保険組合の安藤伸樹理事長らが登壇しました。
私も最後に「都市の人たちに池田町に来ていただき、花とハーブで元気になっていただきましょう」とコメント。

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「カミツレの里」の宿泊施設である「八寿恵荘(やすえそう)」は、森の中のジャーマンカモミール畑に隣接しています。オーガニックな食材を使った身体に優しいお料理、ジャーマンカモミールの入浴剤がたっぷり入った大浴場、オーガニックコットンのお布団、地元産材の内装、地元材チップを活用したボイラーでの床暖房、薪ストーブなどがあり、アジア初のBIO HOTEL認証を取得しています。2016年グッドデザイン賞も受賞されました。
(※関連記事 http://soratsuchi.com/owada/2013/09/post-27.html )


「カミツレの里」は30年にわたりジャーマンカモミールの有機栽培を行い、入浴剤などの製造を行い、池田町が掲げる「花とハーブの里・池田」の中核を担ってきました。そして昨年度から池田町は地方創生として「ハーバルヘルスツーリズム」に取り組んでいます。

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八寿恵荘のツリーハウス。今年も雪景色に


2015年12月に、労働安全衛生法の一部を改正する法律(ストレスチェック義務化)が施行され、都市部企業では農山村が有する"癒し効果"にニーズが高まっています。池田町の「カミツレの里」もアレルギーやストレスに悩む都市部の個人だけでなく、企業の利用も始まりました。このような背景からも「森林セラピー」やハーバルヘルスツーリズムなどヘルスツーリズムは注目されているのです。


癒しの森のまちづくり・長野県信濃町

コーディネーターを務めた浅原さんは、今年3月31日まで長野県信濃町の職員でした。役場在職中は「森林セラピー」(2006年に国内で最初に認定された基地の一つ)を核に、都市部の企業と協定を結び、保養やメンタルヘルス、研修、CSR活動などを受け入れてきました。特に重要なのは宿や、森林を活かしたヘルスケアのガイドです。もともと信濃町はスキーリゾートのメッカでしたのでペンションが沢山あり、そのオーナーや、移住されてきた方たちが各種自然療法について学び"森林メディカルトレーナー"(町認定)としてガイドを務めるようになりました。今では協定企業は47社、年間のべ5,000人を超える従業員やその家族が信濃町を訪問し、心身の健康に欠かせない存在になっています。

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水辺は水療法にも

また、信濃町には作家で冒険家であるCWニコルさんの「アファンの森」もあります。30年かけて豊かな森を再生されました。森林セラピーをはじめ、"癒しの森"をコンセプトにまちづくりに取り組んでいるのが信濃町の地域創生の特徴です。
森や自然の力を活かしたメンタルヘルスケアやヘルスツーリズム、今後も活用が広がっていくことでしょう。

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アファンの森でガイドをする高力(こうりき)さん

農山村の暮らしを体験する「農泊」 (大分県宇佐市安心院)

近年、都市部居住者のみならず、海外の人からの人気が高まっている宿泊形態に「農家民泊」(農村民泊とも)があります。
私もここ数年は宮崎や大分の「世界農業遺産」エリアにうかがうことが多いのですが、なるべく農泊や民宿など、地域の人々の暮らしがわかるところに泊まるようにしています。そうした宿は、その地域ならではの旬の食材を使った郷土料理を楽しみながら、農家のお母さん、おとうさんと親しくお話ができるからです。

先日、大分県宇佐市安心院(あじむ)で約20年前から農泊をしている時枝仁子(ときえだ・まさこ)さんの「百年乃家ときえだ」に、宇佐市内の両合(りょうあい)棚田の再生に取り組む石井康美(こうみ)さんと一緒に泊まりました。
時枝さんは「農林漁家民宿おかあさん100選」にも認定されています。

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「百年乃家ときえだ」


安心院におけるグリーンツーリズムの理念

旧安心院町では1996年に「グリーンツーリズム研究会」が発足し、「農村民泊」に全国で初めて取り組み、都市と農村が交流するグリーンツーリズムの先駆けとして注目を集めてきました。現在は「NPO法人安心院グリーンツーリズム研究会」が事務局を担い、国内外からの滞在者の仲介や、研修を行っています。

町内で開催される恒例イベントの「ワイン祭り」の来訪者に、B&B(朝食とベッド)を提供し始めたことが、「会員制農泊」のはじまりとされています。その後、大分県がルールを制定し、農泊は広がり定着していきました。その数は年間1万人を超えるといいます。

その理念は以下の通りです。少し長いですが引用させていただきます。
 

「グリーンツーリズムとは、地域に生きる一人一人が農村での日頃の生活を楽しく送る中で、外からのお客を温かく迎え入れることのできる《豊かに輝く農村》を目指した、新しい農村経営を求める運動である。

グリーンツーリズムとは、都市(消費者)と農村(生産者)のこびることのない心の通った対等な交流を通じ、「知縁(情報で結ばれた親類)関係」となり、共生の道を探すものである。

グリーンツーリズムとは、村における連帯意識を、生活を通し景観から産業まで一体的とりくみを職業的かつ年代的垣根を越えた連携を図る中に行うことにより、地域経済の発展と町全体の活性化を目指すものである。

グリーンツーリズムとは、閉ざされた農村社会の過去のイメージを払拭し、農村婦人の地位と意識の向上ならびに自立を図り、男女共同にして成り立つ「ムラづくり」と魅力的家族関係を作る運動である。

グリーンツーリズムの根付いた農村には、恵みに豊かな自然環境が大切に守られていて、
その中で生きる人々の自信に満ちた笑顔がある。
それを求め、心のせんたくのために足繁く訪れる旅人により町の品位は高まり、経済も潤すことができるものである。

グリーンツーリズムの普及により町が息づけば、次世代を担う子供たちに明るい夢を与え、誇りを持つことができる。」


「両合棚田」でも農泊を始めたい

「国東半島宇佐地域世界農業遺産」認定地域である宇佐市院内(いんない)地区では、今年「両合(りょうあい)棚田再生プロジェクト」が始まりました。そのプロジェクトの中心メンバーの一人が石井康美(こうみ)さんです。60代後半ですが、20歳で農家に嫁いでから約50年、牛、シイタケ、林業といった仕事をしながら3人の子供を育て、義母の介護をし、ようやく少し自分の時間が取れるようになってきたことから、棚田再生プロジェクトに熱心に参画しています。


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田植えをする石井康美さんと筆者


旧院内町にある「両合棚田」は棚田100選にも選ばれている棚田で、石橋のかかる小さな川を挟み、両側に棚田が広がるという景観です。かつては写真撮影のスポットとして人気でしたが、近年は獣害がひどく、約8割が耕作放棄状態になっていました。それを、世界農業遺産認定を機に、再度再生させたいと、地域の人たちが立ち上がりました。10年ぶりに復田した田んぼもあり、秋には美しい景観が一部蘇ってきました。

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今年2月の棚田の様子。8割が耕作放棄状態


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9月24日の稲刈り。美しい景観が戻ってきた


そして康美さんはこの両合棚田に泊まってもらえるよう、「私も農家民泊をしてみたい」と思うようになり、勉強の為に一緒に時枝仁子さんのお宅に泊めていただいたわけです。

「両合棚田再生プロジェクト」紹介 

「百年乃家ときえだ」は年間450人(修学旅行250人、国内一般100人、外国人100人)ほどが泊まる人気の農家民泊です。一緒に夕飯の支度をしながら(郷土料理づくりの体験もプログラムの一つです)農泊のことを教えていただきました。また、夕食はスッポンなべをつつきながら、農家に嫁いだ女性の人生や暮らし、国内外の人たちとの交流の楽しさなど色々とお話しをうかがいました。

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時枝夫妻と鍋をつつきながら


農村の女性が輝いていられるように

そして翌朝、部屋にコーヒーを持ってきてくださった仁子(まさこ)さんが「女性活躍ということで大臣や知事に女性がなるにもいいけれど、農家の嫁、女性が輝ける社会になってほしい」と。

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時枝仁子さん


世界農業遺産を支える農林業家、がんばってきた女性たちを、応援したいという気持ちで胸が熱くなりました。

2年目を迎える「広野わいわいプロジェクト」(福島県広野町)

今から4年ほど前。2012年1月12日、いわき市常磐広野町仮設住宅には広野町から町民が避難していました。その集会所で「太陽光パネルづくりワークショップ」が開催され、私も参加しました。そこで広野町から避難している根本賢仁さん(68)と出会いました。根本さんは自宅も田畑も津波で流された方でした。セルを一枚一枚はんだごてで接着し、太陽光パネルをつくりました。避難している広野町民、いわき市民、首都圏からのボランティアが一緒に作った太陽光パネルは、仮設住宅の街灯となりました。

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翌2013年の春、いわきのNPO法人ザ・ピープルが、広野町内の3反の綿畑で和綿の有機栽培を開始しました。ザ・ピープルでは前年からいわき市内を中心に綿の有機栽培を始めていました。広野町の畑の草刈り等を自主的に行っていたのはあの根本さんでした。


防災緑地に交流のしくみ

13年5月に東京のNPO法人JKSKが主催するボランティアバスに私も参加し、広野町の綿畑で、根本さんと再会しました。
「この近くに12ヘクタールの林ができるんです。防災緑地です。しかし、広野町は高齢者が多く、ぜひいわきや首都圏の皆さんにも植樹や森づくりに力を貸していただきたい」
そんな相談がありました。

広野町の沿岸に、幅50メートル、総延長約2キロメートルの防災緑地の建設が始まっていました。県の富岡土木事務所は造成と並行して、主に町民を対象にした「ひろの防災緑地サポーターズクラブ」を設置し、どこにどのような樹木を植えるか、どのように管理していくか話し合いを持つことになりました。


賑わい、なりわいを

広野町は町民の帰還が震災から6年目の今も2500人ほどで半数程度です。そして同じくらいの人数の作業員の人たちが住んでいます。廃炉作業や除染作業に従事する人たちです。子供や女性が安心して暮らせるような町の賑わい、防災緑地での植樹や育樹に住民が関わるしくみ、コミュニティを維持するための女性の仕事づくりなどが必要とされていました。

ボランティアバスでは畑で汗を流した後、地元の方たちと意見交換を重ねました。そして昨年春、広野町に賑わい・なりわいを創り出す「広野わいわいプロジェクト」(復興庁「新しい東北先導モデル事業」)が始まりました。いわきのNPO法人ザ・ピープルや、いわきおてんとSUN企業組合もパートナーとして参画しました。

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綿つむぎ、オリーブキャンドル

昨年一年間に、二ツ沼総合公園で3回ほど「ひろのパークフェス」というイベントが開催されました。回を追うごとに参加者も増え、2000人ほどが参加し、食べたり遊んだり家族やグループで楽しい一日を過ごせる場が実現しました。

商品開発ではスピンドルという綿を紡ぐオリジナル器具を作りました。広野町の復興のシンボルでもある桜の木、オリーブの剪定枝が使われています。これで広野の綿畑で収穫された綿から糸を紡ぐことができます。またオリーブキャンドルも誕生しました。広野町にはオリーブの栽培が広がりつつあり、その葉を粉にして練り込んでいます。形がオリーブの実に似ていて可愛いと人気です。地元の女性たちが手作りしています。

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そして防災緑地には「プレゼントツリー」という仕組みを導入しました。2000本の里親を募り、10年間交流するというものです。
今年3月6日に「プレゼントツリーinひろの」の植樹祭(第1回森の交流会)が開かれ、町長、町民、首都圏からのボランティア約130人が参加し、苗を植えました。
「用意した広葉樹の苗は2,000本。スダジイ、アカガシ、クヌギ、コナラ、エノキです。このたび完成した防災緑地に今日植える苗木が、長い時間をかけて里山となり、広野町とそこに住む皆さまを守るとともに、コミュニティ再生の場となることを祈ってやみません。」
開会式で主催者である環境リレーションズ研究所理事長の鈴木敦子さんのご挨拶です。

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人生のセカンドステージは社会貢献

この間、綿畑や植樹のボランティアに参加した首都圏メンバーのうち、シニアのグループでは2つのNPO団体が生まれました。一つは「立教セカンドステージ大学」の受講生らで、「NPO法人コットンドリームいわき」を立ち上げ、いわき市内での綿の栽培、都内で綿製品の販売を行い、ボランティアバスを自ら実施し、いわきや広野を再訪しています。もう一つは、板橋区の市民らで「NPO法人いた・エコ・ネット」を立ち上げました。区内で綿の栽培を行い、収穫できた綿の里帰りを行いました。人生のセカンドステージにある皆さんが、このように社会に貢献する活動を実践されるのは素敵なことですね。

そして、私が何より嬉しかったことは、4月26日に広野町民の団体が誕生したことです。根本さんを理事長に「特定非営利活動法人広野わいわいプロジェクト」が法人登記を済ませたと報告がありました。地域の主役は地域の人です。町民の皆さんが、復興の地域づくりを考え、主体的に行動する。その応援団、仲間がいわきや首都圏のNPOや企業、市民です。

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国内外の被災地交流。希望の灯りを届ける

今年も首都圏からのボランティアバスを3回、商品開発や「ひろのパークフェス」も開催していくそうです。さらに若い世代を巻き込んでいこうと、広野町の小中高校生に太陽光パネルづくりをしてもらい、そのパネルを同じ地震被災のあったネパールの子供たちに届けようという取り組みも行う計画です。ネパールの地震では倒壊した学校が5,000校、死者9,000名を超える被害がありました。いわきおてんとSUN企業組合ではネパールに「福島から届ける希望の灯り」プロジェクトとして、これまでに3校に手作り太陽光パネルを届けてきました。
自然エネルギーでつくった希望の灯りを小学校に届けるプロジェクト。気持ちが温かくなりますね。

団体名でもありプロジェクト名でもある「広野わいわいプロジェクト」は、広野町、いわき市、そして首都圏の市民らの交流が根幹となっています。震災から6年目を迎えた福島県の浜通り、「双葉八町村に春を呼ぶ!」広野町の町民の皆さんの復興の地域づくり活動をこれからも応援していきたいと思います。

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熊本地震・一歩先、二歩先へ

熊本県・大分県を中心とした大地震により被災された地域の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
4月25日に宮崎県五ヶ瀬町の五ヶ瀬ドームに設置された支援物資の集配拠点、ならびに南阿蘇村の知人農家を訪問してきました。

五ヶ瀬ドームで支援物資の集配を行っているのは「RQ九州」。一般社団法人RQ災害教育センターが地元のNPO法人五ヶ瀬自然学校等と協力して本震から3日目の19日に拠点を立ち上げました。支援物資置き場は五ヶ瀬町の協力で五ヶ瀬ドームを確保できたそうです。
自治体が運営している避難所ではなく、自主的に避難しているところや、子どもが泣くので遠慮して車で寝泊まりしている家族、家は大丈夫だけれども夜になると不安なので車で寝泊まりしている高齢者などをピンポイント支援しています。

必要な物資は日々変わります。私は22日に現地に問い合わせ、「200mlパック入りの野菜ジュース」のニーズが高いと聞き、近所のスーパー何軒かに電話をし、12本入り10セットを確保し、持参しました。

ちなみに一般社団法人RQ災害教育センターは、東日本大震災の被災地支援のために結成されたボランティア組織「RQ市民災害救援センター」から発展して誕生した組織で、2011年12月7日に設立されました。大規模な災害現場で、さまざまな救援活動をする地元の人たちを支援しています。東日本大震災後は、RQ広島、RQ常総なども設置されています。


日々刻々、課題が変わる

RQ九州の副代表でNPO法人五ヶ瀬自然学校の理事長を務める杉田英治(すぎた・えいじ)さんにお話をうかがいました。

活動拠点の壁にこんなポスターが掲出されていました。

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<心がまえ>
1. 膨大な好意という恐怖との戦いである! なるべくその好意を無駄にしたくない!
2. たった今、どこかで困っている人がいるはずだ! 今、何をすべきかを深く考え行動する!
3. それをするとどうなるのか? どんな物が必要なのか? 常に被災している現場を想像し、半歩、一歩、二歩先をリアルに描く!
4. 人間とは、「感覚→意志→行動→感覚・・・」を繰り返す動物である(養老 孟司)感覚を大事にしよう!
5. 行政には行政の、我々には我々の役割と仕組みがある。情報共有と協働で効果を最大に!
6. 我々がやっていることは義務である! パフォーマンスはしない!
7. ネットの情報は怪しむべし! 自分の目で見たことを、信頼できる人が見たことだけを信じろ!


「こんな物資が必要です!」とSNSに情報が流れるととたんにそればかりが沢山届いてしまう。しかも届く頃にはもう足りてしまっている。非常時にパフォーマンスをして目立ちたい人もいるが、そういう姿勢を戒める。ネットの情報だけをうのみにするのではなく、裏を取り、信頼できる人からの情報に基づき行動する。そして、一歩先、二歩先を読みながら、深く考え行動する。
こうしたことを信条、心構えとして書き出し、関係者で共有しているのです。

すでに支援物資はほぼ足りてきている現在、復興支援ボランティアや、募金活動に軸足を移そうとしています。こうした支援拠点を運営する費用や、地域の復興を推進する活動の資金が必要になってきます。ふるさと納税の使途としても有効だと思います。

また、地元には五ヶ瀬中等教育学校という県立の中高一貫校があり、ボランティアにも熱心な学校で、すでに学生が五ヶ瀬ドームに支援物資の仕分け等のボランティアに来ているそうです。
「ボランティアの体験を通じ、震災後の復旧・復興過程で時々刻々と変化する様々な課題を知り、その解決策を考え実践することは、貴重な学びの機会となります。」と杉田さん。


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災害に強い農家、コミュニティづくりを

続いて訪問したのは南阿蘇村の大津愛梨(おおつ・えり)さん、阿蘇山のふもとで5ヘクタールの稲作をされている専業農家で、NPO法人田舎のヒロインズの代表理事でもあります。阿蘇の世界農業遺産の認定に際しても中心的に動かれた方です。幸い大津さんのご自宅やその周辺は家屋への被害も無く、遅れはしたものの、田植えの準備などが始まっているところでした。大津さんは0歳児を始め4人のお子さんの子育て真っ最中ということで、二次災害の恐れもある中、子連れで家を空けることはできないことから、少し先の復興活動に備え募金活動を開始されました。

「まずは家屋を失った方へソーラーランタンやソーラーバッテリーを貸し出したり配布したりして、家屋の片付けやいざという時の灯りをお届けしたい。そして、「農家が食べ物もエネルギーもつくる社会づくり」という活動の一部として、災害に強い農家およびコミュニティづくりの活動に取り組みたいのです。農村の未来を築く活動こそが、中長期的にみた熊本・阿蘇の復興に繋がるという想いからです」と。


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募金や寄附の方法は様々ありますが、最近人気の「ふるさと納税」制度を活用して寄附することも可能です。私は南阿蘇村にお送りさせていただきました。「ふるさと納税」は特産品がお得に手に入る上に税金が控除される仕組みとして利用者が増えていますが、今回は「返礼品不要」と明記し、いつも利用している自治体で被災されたところがあれば、寄附をされてはいかがでしょうか。

少し落ち着いたら、私は熊本、宮崎、そして大分の「世界農業遺産」地域の女性たちと復興活動について意見交換を始めてみたいと思っています。

都市と農山村をつなぐ 空と土プロジェクト
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プロフィール

大和田順子さん

LOHASビジネスプロデューサー/
LBA(ロハスビジネスアライアンス)共同代表/
NPO環境立国 理事

東急百貨店、東急総合研究所、ザ・ボディショップ、イースクエア等を経て2006年4月に独立。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、人・地域・地球の健康を指向する新しい価値観LOHAS(ロハス)の考えに基づき、講演・研修や執筆、コンサルティング、NPO活動を通じて、ライフスタイル・ビジネス・社会の変革に情熱を注いでいます。

LOHAS & Sustainable Style

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2年目を迎える「広野わいわいプロジェクト」(福島県広野町) - 2016.06.30
熊本地震・一歩先、二歩先へ - 2016.04.29
世界遺産の茅場(かやば)を再生する。合掌の森再生プロジェクト(富山県南砺市五箇山) - 2016.03.31
食と農と福祉の小さな経済循環(島根県益田市真砂地区)  - 2015.12.20
温泉熱を利用したエネツーリズム(宮城県大崎市鳴子温泉) - 2015.08.22
目を覚ませ!放置里山に眠る種たち。 「アーバン・シード・バンク・プロジェクト」スタート! - 2015.06.30
3地域が認定に向けて挑戦中!「世界農業遺産」 - 2015.04.15
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